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  • 能登半島国定公園を歩く──海岸線の絶景と和倉温泉に癒される旅

    目次
    はじめに
    千里浜
    能登金剛
    猿山岬
    皆月湾
    曽々木海岸
    禄剛崎
    九十九湾
    能登島
    雨晴海岸
    二上山
    和倉温泉
    旅のまとめ
    あとがき

    はじめに

    能登半島国定公園は、石川・富山の2県にまたがる、能登半島の海岸を主体に指定された国定公園であり、能登の海岸線が描く多様な風景を味わえる場所である。 千里浜の広い砂浜、能登金剛の荒々しい断崖、曽々木海岸の海食洞門、九十九湾の静かなリアス式海岸、禄剛崎の岬、そして能登島の穏やかな内海──。 海岸線を歩くたびに、まったく異なる表情が現れ、能登の自然が持つ奥深さが静かに伝わってくる。

    旅の途中で立ち寄る雨晴海岸や二上山では、海越しに立山連峰を望む雄大な景観が広がり、能登の海が北陸の山々とつながっていることを感じさせてくれる。 そして旅の締めくくりには、和倉温泉のやわらかな湯が心身をそっと癒してくれる。

    海岸線の多様性と静けさを歩きながら味わう── そんな能登半島の旅をまとめてみたい。


    千里浜

    ──海と空がつながる砂浜の風景

    千里浜【ちりはま】は、日本でも珍しい「車で走れる砂浜」として知られている。 砂粒が細かく締まり、波打ち際まで続く広い砂浜は、まるで海と空がゆるやかにつながっているような柔らかな風景を見せる。 夕暮れ時には、太陽がゆっくりと日本海へ沈み、海面が金色から橙色へと変化していく。 波の音が一定のリズムで耳に届き、砂浜を歩くと足裏に心地よい感触が残る。能登の旅の入口として、千里浜の静けさは心をゆっくりと整えてくれる。

    千里浜なぎさドライブウェイは、のと里山海道の千里浜ICと今浜ICとの間の約8kmにわたる千里浜海岸の砂浜の道路である。観光道路の目的で解放されている。

    千里浜なぎさドライブウェイは、一般の自動車や大型バスでも砂浜の波打ち際を走ることができるように整備されていて、悪天候ではない限りは年中走行可能である。天候が悪く海がしけたり、強風時は安全のために閉鎖される。

    千里浜なぎさドライブウェイ(妻が運転してくれたので、助手席から撮影できた)

    一般の車両やバイク、大型観光バスが走行できるのは、千里浜海岸の砂粒が一般的な海岸の砂の半分程度と小さく(直径約0.2mm)、海水を吸って舗装道路のように固くなり、普通の砂浜のように沈まないからであるらしい。

    ここなら交通量が少ないのでゴールド免許保持者の妻(実態はペーパードライバー)も運転ができた。私は、自分で運転するより緊張したが、普段は絶対にできない車内からの撮影ができて良かった。天候が良ければもっと素晴らしい想い出の写真を撮ることができたことだろう。それが残念だ。

    名 称千里浜なぎさドライブウェイ
    所在地羽咋市千里浜町~宝達志水町今浜
    駐車場あり(無料)
    Link千里浜なぎさドライブウェイ

    能登金剛

    ──荒々しい断崖と日本海の迫力

    能登金剛【のとこんごう】は、能登半島の西岸に広がる断崖の名所である。 海食作用によって削られた岩壁が約30kmに亘って連なり、奇岩・洞門が次々と現れる。能登金剛の見所として知られているのは巌門、関野鼻、機具岩、ヤセの断崖、碁盤島、吹上滝、増穂浦、玄徳岬などである。能登半島国定公園の代表的な景観の一つであり、遊覧船も運航されている。

    能登金剛・巌門

    代表的なスポットである「巌門」は、波の浸食によって形成された天然の洞門で、幅6m、高さ15m、奥行き60mにも及ぶ巨大なものである。波が洞門の奥へと打ち寄せ、白い飛沫が舞い上がる迫力ある景観を見せる。

    能登金剛・巌門

    巌門は、岩盤が海に突き出たおり、その岩盤には浸食によってぽっかりと穴があいて洞門となっている。洞門の上に登ると、そこは広場のようになっており周囲に老松が生い茂っていた。

    能登金剛・巌門

    断崖に立つと、海風が強く吹き抜け、眼下には荒々しい日本海が広がる。 千里浜の穏やかな砂浜とは対照的に、能登金剛は「海の力強さ」を象徴する場所である。

    名 称能登金剛・巌門
    所在地石川県志賀町富来牛下巌門
    駐車場あり(無料)
    Link巌門|ほっと石川旅ねっと

    機具岩【はたごいわ】は、「能登二見」とも呼ばれる夫婦岩で、夕陽が美しいとされる。

    関野鼻は、日本海沿岸では珍しいカルスト地形の岬で、非常に変化に富んだ奇岩風景が見られるという。かぶと岩、義経一太刀岩、弁慶二太刀岩などと名付けられた奇岩があるというが、志賀町により海岸付近への立ち入りが禁止されている。

    増穂浦は、貝類が豊富に採れる遠浅の砂浜海岸として知られる。突堤には世界一長い、全長460.9mのベンチが設けられており、新たな観光名所となっているそうだ。

    ヤセの断崖は、標高35mもの垂直状の断崖絶壁で、高所が苦手な私が行くのは無理な場所である。


    猿山岬

    ──灯台と海が描く静かな岬の風景

    猿山(標高332m)の西側は侵食によって高さ200mもの断崖絶壁となって海に接しており、猿山岬【さるやまみさき】と呼ばれ、岬の先端には猿山岬灯台がある。

    能登半島の北端に近い猿山岬は、灯台と海が描く静かな風景が魅力である。 岬の先端に立つと、海が遠くまで広がり、風がやさしく吹き抜ける。 春にはミズバショウの群生が見られ、季節ごとに異なる表情を見せる。断崖の迫力とは異なる、静けさに満ちた「能登の岬の風景」がここにはある。

    能登半島国定公園に指定されている猿山一帯は早春に咲く雪割草の大群生地として知られる。

    名 称猿山岬
    所在地輪島市門前町吉浦〜深見
    駐車場あり(有料)
    Link猿山岬灯台(雪割草群生地)
    門前町観光ガイド

    皆月湾

    ──穏やかな湾が見せる柔らかな海景

    皆月湾【みなづきわん】は、能登半島北西部外浦側に位置する半円形の湾である。海の幸に恵まれ、綺麗な海と砂浜の景観が美しいことで知られる。皆月の地名は港を意味する水津城に由来しており、北前船の要港であったらしい。

    皆月湾は、能登の海岸線の中でも特に穏やかな湾である。 入り江が深く入り込み、波が静かで、海と空の境界が曖昧になる瞬間がある。 海面はゆっくりと揺れ、遠くの山々が柔らかい影を落とす。能登の「内海のやさしさ」を感じられる場所であり、旅の途中でふと立ち寄ると心がゆっくりと落ち着いていく。

    皆月と餅田の集落では季節風除けの間垣があり、伝統的建築物も多く見られる。

    名 称皆月湾
    所在地石川県輪島市門前町皆月
    駐車場なし
    Link皆月海岸
    門前町観光ガイド

    曽々木海岸

    ──海食洞門と奇岩が並ぶ海岸線

    曽々木海岸【そそぎかいがん】は、能登半島北北西部の外浦側に位置する海岸で、豪快な断崖風景で知られ、能登半島有数の景勝地となっている。海食洞門や奇岩が連続する能登の代表的な海岸景観であり、国の名勝及び天然記念物にも指定されている。

    主として流紋岩からなる堅い岩盤が日本海の荒波によって浸食されて無数の奇岩となっている。名前がついた奇岩としては水門崖【すいもんへき】、福が穴、尋岐【ひろき】、権現岩、窓岩などが知られる。

    特に「窓岩」は、波と風が長い年月をかけて岩を削り、自然の力がつくり出した造形美として知られている。板状の流紋岩の真ん中に窓の如く直径2mの穴が開いた奇岩で、曽々木海岸のシンボル的存在となっている。

    窓岩の前には「窓岩ポケットパーク」があり、記念撮影に最適の場所となっている。春と秋には、天候が良ければ、夕暮れ時に「窓」のなかに夕日がピッタリと納まった瞬間を見ることができるらしい。是非、写真に撮ってみたいものだ。

    能登金剛の荒々しさとは異なり、曽々木海岸は「造形の美しさ」が際立つ場所である。 海岸線を歩くと、岩の形が角度によって変わり、自然の奥深さが静かに伝わってくる。

    名 称曽々木海岸
    所在地石川県輪島市町野町曽々木
    駐車場あり(無料)
    Link曽々木海岸
    窓岩【名所・旧跡】

    禄剛崎

    ──能登半島の最先端に立つ岬

    禄剛崎【ろっこうさき】は、石川県珠洲市に位置し、日本海に面する能登半島の最先端にある岬である。禄剛埼は、能登半島の外浦と内浦の双方の接点に位置するため「海から昇る朝日と、海に沈む夕陽」の両方が見られる場所として知られている。岬の灯台と海の風景は、能登の象徴的な景観となっている。

    古くから日本海航路の要所として重要視され、特に一帯は海難事故が多かった。そのため、航路を照らすのろしが古くから上げられていた場所であり、狼煙町、狼煙港、狼煙海岸などの地名が残っている。禄剛埼灯台は、禄剛埼の先端に建ち、地元の人たちからは、設置されている狼煙町の名前から「狼煙の灯台」とも呼ばれている。

    禄剛埼灯台は、明治時代にイギリス人技師の設計によって造られた白亜の石造灯台である。塔高は12m、灯高は48mであるという。光達距離は18海里(約33km)に及ぶ。歴史的・文化的価値の高さから、Aランクの保存灯台に指定されている。通常の灯台は、レンズを回転させることにより光を点滅させるが、この灯台では、レンズを固定して灯火の遮蔽板を回転させることによって点滅させているという。

    禄剛崎一帯には海岸段丘(海抜約50mの断崖絶壁)が発達しており、沿岸には千畳敷と呼ばれる海食台地(海食棚)もあって景観に優れている。灯台一帯は広場として整備されていて、観光地としての装いが感じられる。

    名 称禄剛崎・禄剛埼灯台
    所在地珠洲市狼煙町イ-51
    駐車場あり(無料)
    Link禄剛崎・禄剛埼灯台

    九十九湾

    ──リアス式海岸がつくる静かな入り江

    九十九湾【つくもわん】は、石川県能登町の内浦側に位置し、複雑に入り組んだリアス式海岸が特徴である。入り江が九十九もあるとして九十九湾と名付けられたという。

    入り江が深く入り込み、海面は鏡のように静かで、波の音もほとんど聞こえない。 能登の「静の海景」を象徴する場所であり、歩くほどにその穏やかさが心に染み込んでいく。海岸線の多様性を感じる旅の中で、九十九湾の静けさは特に印象的である。

    九十九湾の中にある蓬莱島【ほうらいじま】は、高くそびえた岩峰にスダジイが繁茂している小島である。九十九湾を周遊する遊覧船に乗れば船の上から景色を楽しめるという。

    名 称九十九湾
    所在地石川県能登町市之瀬11-8
    駐車場あり(無料)
    Link九十九湾

    能登島

    ──内海の穏やかさと島の風景

    能登島【のとじま】は、石川県七尾市に位置する七尾湾を塞ぐように浮かぶ島である。島によって隔てられた島の三方の海を、それぞれ七尾北湾、七尾西湾、七尾南湾と称する。

    能登島は三ヶ口瀬戸、屏風瀬戸および小口瀬戸によって能登半島と対峙する。能登島大橋が屏風瀬戸に、中能登農道橋が三ヶ口瀬戸に架かっている。小口瀬戸の対岸には観音崎がある。

    能登島へは和倉温泉から能登島大橋で渡ることができる。能登島大橋は、全長1,050 mで、石川県で一番長い橋である。

    七尾湾に浮かぶ能登島は、内海の柔らかい光が印象的な場所である。 島内には里山の風景が広がり、海と山が近接する能登らしい景観が続く。 能登島大橋から眺める海は穏やかで、旅の途中でふと立ち止まりたくなるような静けさがある。能登半島の海岸線の中でも、特に「やさしい風景」が広がる場所である。

    名 称能登島
    所在地七尾市能登島向田町ろ部1番
    Link能登島|ほっと石川旅ねっと

    雨晴海岸

    ──海越しに立山連峰を望む絶景

    雨晴海岸【あまはらしかいがん】は、富山県高岡市北部の海岸で、晴れた日には富山湾越しに立山連峰の山々を望むことができる景勝地として観光客に人気がある。

    雨晴海岸付近には男岩【おとこいわ】や女岩【おんないわ】をはじめとする小さな島や岩礁が多く、立山連峰を背景にできる写真撮影スポットがある。

    雨晴駅の近くには地名の由来にもなったとされる義経伝説が残る義経岩がある。雨晴海岸の名の由来は、源義経が奥州へ落ちのびる途中、にわか雨の晴れるのを待った場所という義経岩と呼ばれる岩がこの海岸に存在し、この海岸の地名「雨晴」の由来にもなっていると伝わる。

    雨晴海岸女岩立山連峰

    また、万葉集の歌人、大伴家持は、この雨晴の風景をこよなく愛し多くの歌を詠んだと伝わっている。その美しい景色は現在にも引き継がれ、浜から眺める海越しの女岩立山連峰は絶景スポットになっている。私達が訪れた日はあいにくの天候で、立山連峰がうっすらと山影のような山容を遠くに現わしてくれただけであった。

    雨晴海岸女岩立山連峰

    雨晴海岸は、富山湾越しに立山連峰を望む絶景で知られ、海と山がひとつの風景の中で重なり、北陸ならではの雄大な景観が広がる。晴れた日には、海越しに雪をいただいた山々が姿を見せ、旅の印象を深く刻んでくれるはずである。

    雨晴海岸女岩立山連峰

    雨晴海岸は、能登の海岸線を歩く旅に「山の視点」を加えてくれる場所である。

    名称雨晴海岸
    所在地富山県高岡市太田雨晴
    駐車場あり(無料)
    Link国定公園 雨晴海岸/富山県

    二上山

    ──海と山が重なる立体的な風景

    二上山【ふたがみやま】(標高274m)は、富山県の高岡市と氷見市にまたがる二上丘陵【ふたがみきゅうりょう】の中心にある山である。「二上山」の名の由来には、東峰(現在の二上山)と西峰(城山;標高259m)を2柱の神に見立てて「二神山」と呼んでいたのを語源とする説がある。

    二上山の山頂へは二上山万葉ライン(全長約8.5km)というドライブコースを利用して行くことができる。御前下駐車場からは遊歩道を登って行くことになる。二上山からは高岡市と射水市【いみずし】の市街地のほか、立山連峰や富山湾なども眺望することができる。

    二上山は、雨晴海岸とセットで訪れたい場所である。山頂からは富山湾が広がり、海と山が重なる立体的な風景が楽しめる。能登の海岸線の旅に、静かな山の時間が加わることで、旅の奥行きが深まる。

    名 称二上山
    所在地富山県高岡市二上
    駐車場あり(無料)
    Link高岡市/二上山公園
    二上山万葉ライン

    和倉温泉

    ──海辺の名湯で旅を締めくくる

    和倉温泉【わくらおんせん】は、能登半島最大の温泉地であり、「潮の香りと湯けむりが漂う海の温泉」として知られる。和倉温泉の歴史は古く、開湯は1200年以上も前であるという。効能豊かな泉質を持ち、古くから多くの湯治客で賑わっていたと伝わる。

    和倉温泉は、七尾湾に面した海辺の名湯であり、海を眺めながら湯に浸かると、旅の疲れがゆっくりとほどけていく。 湯のやわらかさと海の静けさが重なり、能登の旅を締めくくるにふさわしい時間が流れる。

    海岸線の多様な風景を歩いたあとに訪れると、心身が静かに整っていくような感覚がある。

    良質な温泉に浸かって、新鮮な海の幸を堪能したい人には最適な温泉地であるかも知れない。和倉ICから車で約10分とアクセスも良い。電車で行っても和倉温泉駅からタクシーやバスで約5分で到着できるという便利さである。

    名 称和倉温泉
    所在地石川県七尾市和倉町
    駐車場あり(無料)
    Link和倉温泉~わくらづくし~

    泉質・効能

    泉質は、ナトリウム・カルシウムー塩化物泉(高張性弱アルカリ性高温泉)である。弱アルカリ性(pH7.7)で、無色透明、無臭のお湯である。

    湧出量は豊富で、源泉の泉温は約90℃と高温である。海に湧くため塩分を豊富に含み、ほんのりと塩辛い味がするのも特徴である。塩分を多く含むため、湯に浸かると最初は少しピリピリするが、保温効果が高く、湯冷めしにくい。冷えに悩む方にもおすすめ温泉であるという。飲用すれば胃腸病や貧血症に効能があるとされる。

    神経痛、筋肉痛、関節痛、婦人病、冷え性、皮膚病などによいとされ、特に入浴では神経痛やリウマチの改善に期待ができるという。

    海に湧く温泉ならでは特徴として、ほんのりと潮(塩分)の香りを感じることができ、それが安心感を与えてくれると人気である。


    温泉街

    海に湧く温泉は全国的にも珍しく、温泉街には代表的な日本建築様式を用いた美しい数寄屋造りの老舗の旅館が多く立ち並ぶ。温泉街には近代的な大型旅館や隠れ家的な宿まで、趣向を凝らした宿が勢ぞろいしている。質の高いサービスを提供している宿も多いため、全国有数の高級温泉街としても知られている。

    和倉温泉街に軒を連ねる飲食店では、七尾湾や能登近海で獲れた海の幸(新鮮な魚介)を使ったおいしい料理が食べられるのも嬉しい。このわたやくちこなどの珍味も堪能できる。海に面した立地の恩恵といえよう。


    近郊の観光スポット

    七尾湾を一望できる絶景スポットが至る所に点在している他、青林寺や老舗旅館・加賀屋など歴史や伝統ある建物が点在しているので大人の観光にはもってこいである。

    豊富な湧出量を誇る和倉温泉では、無料で温泉卵を作れたり、足湯に浸かれたりなど、温泉をお得に堪能できるスポットがある。


    和倉温泉総湯

    和倉温泉総湯は、和倉町民で組織する和倉温泉合資会社が運営する日帰り温泉施設である。源泉を加水することなく利用しており、毎日閉館後にお湯は全て入れ替えているという。


    旅のまとめ

    能登半島の海岸線を歩いてみると、この半島がいかに多様な海の表情を持っているかをあらためて実感させられる。千里浜の広い砂浜では、海と空がゆるやかにつながるような柔らかな風景が広がり、旅の始まりにふさわしい静けさを感じた。 能登金剛では一転して、荒々しい断崖と日本海の力強い波が目の前に迫り、海の迫力と自然の造形美に圧倒された。

    猿山岬や皆月湾では、海が穏やかに広がり、風の音だけが静かに響く。曽々木海岸では、海食洞門や奇岩が並び、自然が長い年月をかけて刻んだ造形の美しさに見入ってしまう。 禄剛崎に立つと、海が360度に広がり、能登半島の地形の終端を感じる風景が静かに心に残った。

    九十九湾の静かなリアス式海岸、能登島の内海の柔らかな光──。 能登の海は、場所によってまったく異なる表情を見せる。 荒々しさと静けさ、外海と内海、断崖と砂浜。 その対比が、能登半島の海岸線の魅力をより深くしている。

    旅の途中で立ち寄った雨晴海岸や二上山では、海越しに立山連峰を望む雄大な景観に出会い、 能登の海が北陸の山々とつながっていることを感じさせてくれた。 海と山がひとつの風景の中で重なるこの場所は、旅の印象を静かに深めてくれる。

    そして旅の締めくくりに訪れた和倉温泉では、七尾湾を眺めながら湯に浸かり、 海岸線を歩いた疲れがゆっくりとほどけていくようなやさしい時間が流れた。 自然の迫力と温泉の静けさ──その対比が、能登の旅をより豊かなものにしてくれる。

    能登半島の海岸線は、歩くほどにその奥深さが静かに心に染み込んでいく。 今回の旅で出会った風景は、能登のほんの一部にすぎない。まだ訪ねていない場所も多く、次の旅ではそれらの風景をひとつずつ丁寧に歩いてみたいと思う。


    あとがき

    能登半島はこれまで何度も訪れてきたつもりでいたが、今回あらためて調べてみると、 実際にはごく一部しか歩けていなかったことに気付かされ、少なからず驚いた。 近くまで行きながら気付かずに通過していた場所がいくつもあり、 思い返せば「もったいない旅」を何度も繰り返していたことになる。

    旅は、ただぼんやりと時間を過ごす旅を除けば、やはり事前準備が大切だと痛感する。 行き先だけでなく、周辺の景勝地や地形の特徴を少しでも知っておくことで、 旅の密度は大きく変わり、目の前の風景の意味がより深く理解できる。 その結果、旅の満足感も確かなものとなる。

    能登半島には、まだ訪ねていない景勝地が数多く残されている。 次の機会には、それらの場所をひとつひとつ丁寧に歩き、 能登の海岸線が持つ多様な表情をじっくり味わってみたい。 その際には、今回の反省を活かし、しっかりと事前学習をしてから旅に出るつもりである。


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