◆ はじめに
淡路島の北に広がる「あわじ花さじき」は、季節の花が丘を彩る美しい場所である。 春には一面の菜の花が風に揺れ、 夏にはひまわりが太陽の光を受けて力強く咲き、 秋にはコスモスが淡い色をまといながら丘を優しく染めていく。
海風がそっと頬をかすめ、 花々が風に揺れるたびに、季節がゆっくりと進んでいくことを感じられる。 歩くほどに、花の色と香りが心に静かに広がり、 淡路島の丘が描く季節の風景が、旅の記憶として深く残っていく。
本稿では、菜の花・ひまわり・コスモス── 三つの季節の花畑を歩きながら出会った、 淡路島の丘の静かな風景を綴ってみたい。
あわじ花さじきの成り立ち
──海と丘が育む花の風景
あわじ花さじきは、淡路島北部の高原に広がる花の名所である。 海を望む丘に広がる花畑は、季節ごとに植え替えられ、 訪れるたびにまったく違う風景が楽しめる。四季折々の花を楽しめる「極上の見物席」としての意味を込めて「あわじ花さじき」と命名された公園である。
海を望む小高い丘にある花の名所は、花々が育つのに適した環境で、 春・夏・秋と季節の花が途切れることなく咲き続ける。 淡路島ならではの自然の恵みが、花さじきの風景を支えている。
あわじ花さじきは、春は「菜の花やムラサキハナナ」、夏は「ひまわり」、秋は「コスモス」といった季節ごとに異なるお花畑を私たちに楽しませてくれる。私のお気に入りの場所でもある。
| 名 称 | あわじ花さじき |
| 所在地 | 兵庫県淡路市楠本2805-7 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 兵庫県立公園あわじ花さじき |
春の菜の花畑
──風に揺れる黄色の絨毯
春の風物詩の一つに「菜の花畑」がある。一面に広がる菜の花畑を目にするとついシャッターを切りたくなる。黄色の絨毯のような景色は田園情緒を感じさせ、誰の心をも癒してくれるはずだ。
菜の花畑の名所が日本各地に点在しているが、私が好きな菜の花畑の一つが「あわじ花さじき」のものである。春の花さじきは、菜の花が一面に広がる黄色の丘になる。 風が吹くたびに花々が揺れ、まるで丘全体がゆっくりと波打っているように見える。
菜の花の香りは強すぎず、 歩くたびにふっと漂うその香りが、 春の訪れを静かに感じさせてくれる。青い空と黄色の花畑の対比は、春の淡路島を象徴する美しい風景である。

菜の花は、アブラナ科アブラナ属の植物の総称であるが、特にアブラナ(油菜)またはセイヨウアブラナ(西洋油菜)の別名として用いられることが多いと思う。園芸上では鑑賞用に利用するものはナバナ(菜花)、食用とする場合はハナナ(花菜)と呼ぶ。
菜の花はアブラナ科アブラナ属の植物の総称であるから、ナタネ、カブ、ハクサイ、チリメンハクサイ、キャベツ、ブロッコリー、カラシナ、ザーサイ 野沢菜、チンゲンサイなども、勿論、菜の花と呼んで差し支えない。

あわじ花さじきでは、瀬戸内海が見えるのも良い。明石海峡や大阪湾を背景に、約15haの広大な敷地に咲き誇る花の大パノラマが自慢の公園だけに、菜の花畑も実に壮観である。

あわじ花さじきの「菜の花」は、例年3月中旬~4月中旬にかけて見頃で、早くて1月中旬から開花する早咲き品種から遅咲き品種まで幅広く植栽されている。したがって、長期間楽しむことができる。言い換えれば、いつ行っても「菜の花」を見ることができる。
日本各地の「菜の花畑」の平均作付株数は、1 ha当たり約51万株(3万~121万株)であるから、あわじ花さじき の場合は、約765万株(45万~1815万株)と推定される。

夏のひまわり畑
──太陽の光を受けて咲く力強い花々
夏の風物詩の一つに「ひまわり畑」がある。夏の眩しい太陽に向かって元気に咲いているヒマワリを見るとこちらも元気をもらえる。あわじ花さじきでは、夏にはひまわり畑で季節の風物詩を楽しむことができる。
夏になると、花さじきはひまわりの丘へと姿を変える。 太陽の光をいっぱいに受けたひまわりは、 力強く、まっすぐ空に向かって咲いている。ひまわり畑の中を歩くと、 花々の背丈が高く、視界いっぱいに黄色が広がり、 夏のエネルギーを感じられる風景が続く。海風がひまわりの間を通り抜けると、 暑さの中にも心地よい涼しさがあり、 夏の散策がゆっくりと楽しめる。

ヒマワリ(向日葵)はキク科の一年草の植物である。花は黄色で、種は食用となる。MLBの野球中継を観戦しているメジャーリーガーが試合中にダッグアウトでひっきりなしにヒマワリの種を食する光景が映り出されることがある。そんな光景を見るまで、私はヒマワリの種はモルモットの餌だとばかり思っていた。
現在、ヒマワリは、大豆、ナタネ、綿実に次ぐ4番目に生産量の多い油料用植物である。一方、食用作物(種が食用)としての歴史はかなり古い。ヒマワリの原産地は、北アメリカ大陸の西部とされ、紀元前からインディアンの食用作物として利用されていたという。
1500年代にスペイン人がヒマワリの種をスペインに持ち帰り、自国内で栽培を続けた。約100年間、ヒマワリはスペインの国外には持ち出されなかったが、17世紀に入り、フランス、ロシアへと広まった。日本にも17世紀に伝来したという。
ところで、向日葵(ヒマワリ)は、本当に太陽に向かって咲くのだろうか? それは真実だが、太陽に向かって咲くのは向日葵だけではなく他の草花も同じだ。向日葵の花は大きいから目立つのだろうと言われている。

秋のコスモス畑
──淡い色が丘を染める静かな季節
私は秋が一番好きな季節であるが、一番短く感じる季節でもある。そんな秋の爽やかな気候とともに一面に広がるピンクや白、黄色の絨毯のようなコスモス畑は、まさに秋の風物詩といえよう。暑くもなく、寒くもない、秋ならではの気候の中で、広大なコスモス畑の景色を十分に楽しみたいものだ。
秋の花さじきは、コスモスが丘を淡い色で染めている。 白、ピンク、薄紫── それぞれの花が風に揺れ、 秋らしい柔らかな風景が広がる。コスモスは背丈が高く、 風が吹くたびに花々が揺れ、 丘全体が静かに波打つような美しさがある。夏の力強さとは異なる、秋の静けさが心にゆっくりと広がっていく。

コスモス(cosmos)は、キク科コスモス属の一年性植物の総称で、アキザクラ(秋桜)ともいう。日照時間が短くなると花をつける代表的な短日植物で、秋に開花する。
コスモスの頭花は径6~10cm、周囲の舌状花は白から淡紅色、あるいは濃紅色。中央の筒状花は黄色。葯は黄褐色。通常、舌状花は8枚である。
コスモス畑は広角レンズで撮影した方が全体像が分かってよい。しかし、それだけではつまらない。遠くからでは分からないが、コスモスは個性派ぞろいである。


コスモス畑は広角レンズで撮影した方が全体像が分かってよい。しかし、それだけではつまらない。遠くからでは分からないが、コスモスは個性派ぞろいである。


コスモスの変種か!?
よく観察すると変種のような変わり種がたくさん見つかり、大変愉快だ。これらコスモスの写真は、あわじ花さじきで撮影したもの一部である。


コスモスは、熱帯アメリカ原産で、日本には1879年に渡来した外来種である。そのため、河川敷の様な野外へ外来種を植栽するのは在来の自然植生の攪乱であり、一種の自然破壊であるとの批判があるのも事実である。
しかしながら、コスモスは日当たりと水はけが良ければ、やせた土地でもよく生育するので観賞用に日本各地の休耕田や商用庭園などで栽培され、そのコスモス畑は観光資源となっている。

歩くと見える花さじきの魅力
あわじ花さじきの魅力は、歩くことでより深く感じられる。 丘の上から見下ろす海の青、 足元に広がる花の色、 風に揺れる花々の音── それらが重なり合い、歩く速度だからこそ味わえる風景が広がる。
散策路はゆるやかで、私たちシニア世代にも歩きやすく、 時折立ち止まって風景を眺める時間が、 旅の静けさをいっそう深めてくれる。
◆ あとがき
菜の花、ひまわり、コスモス── 季節の花が咲く丘を歩いていると、季節がゆっくりと進んでいくことを静かに感じられる。春の柔らかさ、夏の力強さ、秋の静けさ。 それぞれの季節が花を通して語りかけてくるようである。
あわじ花さじきは、季節の移ろいを味わうことの大切さを、 そっと私たちに教えてくれる場所である。季節の花が彩る淡路の丘は、風と光が静かに描く旅の風景であり、歩くほどにその色は深まり、私たちの心に静かに残り続ける。