◆ はじめに
初夏の光がやわらかく丘を照らす頃、 味わいの里三日月の花畑では、ルピナス──別名ノボリフジが静かに咲き始める。紫、桃色、白、黄色。 色とりどりの花穂がすっと立ち上がり、 風が吹くたびにやさしく揺れて、 初夏の訪れをそっと知らせてくれる。
歩くほどに、ノボリフジが描く穏やかな色彩が心に広がり、 里山の静けさと重なり合って、 初夏ならではの爽やかな風景が感じられる。本稿では、味わいの里三日月のルピナス畑を歩きながら出会った、ノボリフジが彩る初夏の静かな風景を綴ってみたい。

ルピナスの魅力
──初夏を告げるやさしい佇まい
ルピナスは、初夏を告げる花として親しまれている。 花穂がすっと立ち上がる姿は、どこか凛としていながら、 色合いはやさしく、穏やかな佇まいを見せる。近くで見ると、花びらは小さく繊細で、 その細やかな美しさが、初夏の風景に静かな彩りを添えてくれる。
ルピナスは、マメ科ルピナス属の一年草または多年草である。ルピナス属の和名は、ハウチワマメ属(葉団扇豆属)である。根生葉が掌状複葉であることから付けられた。
ルピナスの花がフジ(藤)に似ており、花が下から咲き上がることからノボリフジ(昇藤)とも呼ばれる。その姿はとてもユーモラスで愛嬌がある。ノボリフジと呼ばれる理由もよく分かる。

味わいの里三日月・ルピナス畑
──里山に広がる初夏の花畑
味わいの里三日月は、旧三日月町で採れた農産物で作った特産加工品の直売所と食事処を併設した施設(お店)である。この施設の近くにルピナス畑がある。
ルピナス畑の広さは約0.4 haもあり、約8,000本の ルピナス が植栽されている。色とりどりのルピナスが5月中旬頃に見頃を迎え、訪れる私たちの眼を楽しませてくれる。
味わいの里三日月は、里山の穏やかな風景が残る地域に位置する。 初夏になると、広い畑にルピナスが咲き始め、 色とりどりの花穂が丘の斜面をやさしく彩る。里山の緑とルピナスの鮮やかな色が重なり合い、 初夏らしい爽やかな風景が広がる。

この地の特産品としては三日月みそと手打ち蕎麦が自慢であり、味わいの里三日月で新鮮な野菜や民芸品が購入できる。 食事処では地元の素材を生かした手作りの味覚、例えば、手打ち蕎麦やこんにゃくなどを味わうことができる。
| 名 称 | 味わいの里三日月・ルピナス畑 |
| 所在地 | 佐用郡佐用町乃井野1266 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 味わいの里三日月 ルピナス畑 |
ルピナス畑を歩く
──色とりどりの花穂が揺れる静かな時間
ルピナス畑の散策路を歩くと、 紫、桃色、白、黄色── それぞれの色が光の中でやわらかく浮かび上がる。風が吹くたびに花穂がそっと揺れ、 初夏の空気と重なり合って、 穏やかな時間がゆっくりと流れていく。歩くほどに、色彩が心に広がり、 初夏の里山を歩く喜びが静かに満ちていく。
ルピナス畑は、歩くことでその魅力がより深く感じられる。 光の角度、風の強さ、花穂の揺れ方── 歩く速度だからこそ気づける細やかな変化がある。その風景は、写真では伝わりきらない、 歩くからこそ味わえる美しさである。


◆ あとがき
ルピナス畑を歩くと、ノボリフジ(昇藤)とも呼ばれるルピナスの花の色が層のように広がり、 初夏がゆっくりと進んでいくことを静かに感じられる。
華やかさよりも静けさをまとった花の姿は、 季節の移ろいをそっと知らせる存在であり、 その風景は旅の中でも特別なひとときとなる。ルピナス畑は、 静けさの中で季節を味わうことの大切さを教えてくれる場所でもある。
ノボリフジが彩るルピナス畑は、光と風が静かに編む季節の便りである。 歩くほどにその色は深まり、旅の記憶として静かに私たちの心に残り続けることだろう。
