| <目次> はじめに 棚田とは 日本の棚田百選 日本の棚田の現状 つなぐ棚田遺産 棚田の風景写真 白米の千枚田 別宮の棚田 岩座神の棚田 うへ山の棚田 稲渕の棚田 あらぎ島の棚田 久野原の棚田 下赤阪の棚田 東後畑の棚田 写真撮影したい棚田35選 あとがき |
◆ はじめに
私の妻は、なぜか棚田のある風景がとても好きで、折にふれて「見に行こう」とよく誘ってくる。 田舎育ちの私には、棚田はどこにでもある当たり前の風景のように思えて、会社員として忙しく働いていた頃は、その誘いをしばしばスルーしていた。 日本は山地が多く、かつては棚田での稲作が広く行われていたため、「棚田は珍しくない」と勝手に思い込んでいたのである。
ところが、自分もシニア世代となり、会社員生活を終えた今では、妻の誘いを断る理由もなくなり、棚田を訪ねる機会が自然と増えていった。 そして、そこで初めて気づいたことがある。
かつて日本の至るところに広がっていた田園風景は、都市化や過疎化によって姿を消しつつある。特に維持管理が難しい棚田は、全国的に急速に数を減らしており、放置され荒廃した棚田跡を目にすることも珍しくない。 棚田は、もはや“どこにでもある風景”ではなくなってしまったのだ。
そのため今日では、棚田そのものが貴重な観光資源として見直されている。日本らしい原風景としての棚田を目にする機会が減った今、美しい棚田に出会えたときには、心から嬉しくなり、その景観の静かな美しさに深く感動するようになった。
本稿は、そんな棚田への思いを綴るとともに、ぜひ写真に収めておきたい“心に残る棚田”を紹介するものである。
棚田とは
棚田とは、山の斜面や谷間の傾斜地に階段状に作られた水田のことで、「千枚田」 とも呼ばれる。 棚田は、伝統・文化、美しい景観、教育、国土保全といった多面的な機能を持ち、農業生産の場であると同時に、地域住民の共同作業によって守られてきた国民共有の財産とされている。[1]

棚田は平地の水田に比べて維持・管理が難しいが、昼夜の寒暖差が大きいことや、水源に近く良質な水で育つことから、上質な米ができると言われている。
また、山からの水を蓄え、洪水や土砂崩れを防ぐ役割も果たしている。こうした多面的機能を持つ棚田を保全しようと、農林水産省は1999年7月26日、全国134地区(117市町村)を「日本の棚田百選」 として認定した。[2]
日本の棚田百選
農林水産省が「日本の棚田百選」を選定する際の基準は、以下の3点であった。[2]
- 営農活動が健全に行われていること
- 棚田の維持管理が適切であること
- オーナー制度や特別栽培米の導入など、地域活性化に積極的に取り組んでいること
しかし、棚田の保全には地形的な不利から多大なコストがかかるという課題がある。 大型農機が使えないため作業の多くが手作業となり、人件費がかさむうえ、重労働であることから 後継者不足 も深刻である。 景観保全や農耕文化の継承のためには、長期的な維持・管理が不可欠だが、その負担は決して小さくない。

日本の棚田の現状
日本の棚田の現状は、残念ながら厳しいと言わざるを得ない。 1970年に始まった減反政策の影響で、棚田の転作や耕作放棄が目立ち始めた。さらに、過疎化や高齢化による農業の担い手不足が重なり、棚田の荒廃は加速度的に進んでいる。
実際、「日本の棚田百選」に選ばれた棚田[3]の中にも、荒廃が進み、かつての姿を失ってしまった場所が少なくない。 選定から20年以上が経過し、維持が困難になった棚田が増えたことを受け、農林水産省は2022年春、山間部に残る棚田の景観維持を目的として「日本の棚田百選」を全面的に見直し、対象地区を選び直す方針を示した。[4]
棚田は、日本の原風景を象徴する貴重な存在である一方、維持には多大な労力と費用がかかる。 そのため、地域の努力だけでは支えきれない状況が広がっており、棚田の未来をどう守るかが大きな課題となっている。

つなぐ棚田遺産
~ふるさとの誇りを未来へ~
棚田については、国の財政的・人的支援を受けられる 「棚田地域振興法」 が2019年に成立し、これまでに 39道府県・676地域 が指定を受けている。 「棚田百選」の後継となる取り組みは、こうした指定地域を中心に候補地が選ばれたようだ。
新たな制度では、ブランド米の生産や棚田を核とした地域振興なども評価基準に加え、棚田を選び直すとともに、名称も 「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」 に改められた。 今回選定された棚田は 271地区 にのぼる。[5]
数が多く覚えきれないほどだが、それだけ日本に棚田が残されるのであれば歓迎すべきことである。
今回の選定では、棚田の保全を持続可能にするため、農家だけでなく、自治体・JA・商工観光業者など 多様な主体が関わること が新たな要件として求められている。
「つなぐ棚田遺産」の選定条件[6]
① 次の要件を満たす棚田であること
- 積極的な維持・保全の取り組みが行われ、今後も継続される見込みがあること
- 原則として、勾配1/20以上 の一団の棚田が 1ha以上 あること
- 棚田を含む地域振興の取り組みに、多様な主体・多世代が参加していること
② 次のいずれかの項目に関する取り組みが優れていること
- 農産物の供給の促進
- 国土の保全、水源の涵養
- 自然環境の保全
- 良好な景観の形成
- 伝統文化の継承
- 棚田を核とした地域の振興

棚田の風景写真
棚田の写真撮影は、見た目以上に難しい。「白米の千枚田」や「あらぎ島の棚田」のように展望台が整備されている場所なら撮影ポイントが分かりやすいが、そうした例はむしろ少数派である。
そのため、棚田の風景写真は 撮る時期・撮る場所・撮る角度 によって構図が大きく変わる。 その場では「これがベストだ」と思ってシャッターを切っても、帰宅後に写真を見返して、自分のセンスのなさに愕然とすることもある。
だからこそ、天候や時期に恵まれ、納得のいく棚田の写真が撮れたときは、心から嬉しいものだ。 棚田は、撮影の難しさと同時に、成功したときの喜びもまた格別である。
白米の千枚田
白米千枚田【しろよねせんまいだ】は、石川県輪島市白米町にある棚田である。「千枚田」とは一般的に数が多い棚田のことをいうが、現地案内板では実際に1004枚の田んぼがあるようだ。

日本海に面しての急斜面に幾重にも段になった田んぼで、一つ一つの田んぼの面積は小さく、耕運機も入らない狭さのため、栽培は昔ながらの手作業で行っているという。

「能登の里山里海」を代表する景観であり、日本の棚田百選に認定されている。

2001年に「白米の千枚田」の名称で国の名勝にも指定されたという。

夏は緑色の棚田が青い空や海と見事なコントラストを生み出しているが、秋の収穫期に黄金色となった稲穂の棚田もきっと美しいことだろう。
| 名 称 | 白米千枚田 |
| 所在地 | 石川県輪島市白米町99-5 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 白米千枚田 | 石川県輪島市 |
別宮の棚田

別宮【べっくう】の棚田は、兵庫県の鉢伏山中腹に広がる高原地帯に位置する、約130枚の田んぼからなる美しい棚田である。

氷ノ山(標高1,510m)が一望できる場所にあり、山とのコントラストも美しい。

養父市別宮には、兵庫県指定天然記念物にもなっている「別宮の大カツラ」と呼ばれるカツラの巨樹がある。幹回りの周囲は14m、樹高は27mである。枝張りは直径24mもあるという。

このカツラの根元からは豊富な清水がこんこんと涌いており、下流に広がる多くの棚田「別宮の棚田」を養っている。
| 名 称 | 別宮の棚田 |
| 所在地 | 兵庫県養父市別宮 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 別宮の棚田 | やぶ市観光協会 別宮の棚田 | 兵庫県観光 「つなぐ棚田遺産」選定棚田 |
岩座神の棚田
岩座神【いさりがみ】の棚田は、千ヶ峰(標高1,005m)の南麓の斜面地に位置する、城郭のような美しい石積みが特徴的な棚田である。

石垣の高さは2~3mほどが大半であるが、中には5mを超える高さの石垣もある。

岩座神の棚田の石垣が美しい理由は、「寺勾配」と呼ばれる反り返りの美しい石積みで造られているからである。「寺勾配」とは寺の屋根の様に、上部にいくほど急になりそり上がる勾配のことをいう。城郭の石垣にも「寺勾配」が採用されていることからも岩座神の棚田の石垣が如何に特別なものであるかが窺える。

岩座神の棚田は鎌倉時代から続くと伝えられており、古いものは700年も経っているという。まさに日本の宝の一つと言えよう。

岩座神地区は、兵庫県の真ん中あたりに位置する、北播磨の山奥の小さな集落である。千ヶ峰は「神おわす山」という意味で「岩座神山」【いわすわりかみやま】と呼ばれたという。それが後に変化して「いさりがみ」の読み方になったと伝わる。

棚田の横を流れる多田川(杉原川の支流)をはさんで五霊神社が鎮座している。その五霊神社の近くには「岩座神のホソバタブ」と呼ばれるホソバタブの巨樹3本も生育している。
| 名 称 | 岩座神の棚田 |
| 所在地 | 兵庫県多可町加美区岩座神 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 岩座神ネット |
うへ山の棚田

うへ山の棚田【うえやまのたなだ】は、日本の棚田百選にも選ばれた棚田であり、40枚弱の水田により形作られている。田んぼの畦が描く曲線美が美しい棚田である。

「うへ山」の地名は、貫田地区の上にある山間部であることに由来するという。

稲刈りは10月だと勝手に思い込んでいたが、9月中旬に稲刈りが始まっていた。訪れるのが1日遅ければ、稲の穂がない田んぼを撮影することになったかと思うと幸運であった。

| 名 称 | うへ山の棚田 |
| 所在地 | 兵庫県香美町小代区貫田 |
| 駐車場 | なし(路上駐車) |
| Link | うへ山|香美町 |
稲渕の棚田
稲渕の棚田は、日本の棚田百選にも選ばれた棚田であり、およそ300枚あまりの水田と畑により形作られている。

日本の農村の原風景を強く残しており、明日香村の歴史的景観の一部でもあるところから重要文化的景観に指定(平成23年)されている。

例年9月下旬に棚田の畔や土手に彼岸花が咲き、奈良県下有数の彼岸花の名所にもなっている。


赤色だけでなく、黄色や白色の彼岸花(自生)を見ることができる。恒例の「彼岸花まつり」もこの地で開催される。
| 名 称 | 稲渕の棚田 |
| 所在地 | 奈良県明日香村大字稲渕 |
| Link | 奈良県景観資産-稲渕の棚田 明日香村観光ポータルサイト 飛鳥観光協会 |
あらぎ島の棚田
あらぎ島は、高野山を源流にする有田川が蛇行してできた河岸段丘上に作られた棚田のことで、島ではない。和歌山県有田川町清水地区に位置し、有田川町のシンボル的存在となっている。

有田川中流域の左岸に扇の形をした半島状の棚田に幾枚もの水田が弧を描きながら扇の先端に向かって伸びている。扇型あるいは舌のような形状をした独特の景観は、国の重要文化的景観にも選定されており、和歌山県で唯一「日本の棚田百選」にも選ばれている。
この棚田は江戸時代初期に、大庄屋だった笠松左太夫【かさまつさたゆう】が村民救済のため私財を投じて開発した新田の一つであったという。総面積約2.4haの土地に大小54枚の水田がある。現在は、6軒の農家によって耕作されているという。

畦道【あぜみち】は農機具が入るだけの十分な広さを持っているだけでなく、水路も十分に確保されているらしい。水路とは「上湯水路」【うわゆすいろ】を指す。上湯水路とは、有田川の支流からあらぎ島まで全長約3kmに及ぶ水路のことである。

あらぎ島の棚田の風景は独特で、季節や稲の育つ過程で異なる風景が楽しめるという。棚田特有のパッチワーク風の景観を楽しむには耕作中の水田風景が最適かも知れない。

あらぎ島の水田へは、観光客は立入禁止である。したがって、あらぎ島の景観は「あらぎ島展望所」から眺めることになる。新城展望所は、有田川を挟んであらぎ島の対岸の国道480号線沿いに設けられた展望所である。

あらぎ島展望所への道程は、国道480号線沿いにある道の駅「あらぎの里」から約700mほど歩く必要がある。


緩い坂道を登ることになるので約10分ほど歩くことになるが仕方がない。展望所近くに駐車スペースも数台分ぐらいはあるが、常に空いているとは言えないので、運次第である。
| 名 称 | あらぎ島 |
| 所在地 | 和歌山県有田川町清水1 |
| 駐車場 | 道の駅「あらぎの里」 駐車場利用 |
| 車利用の場合 | 阪和自動車道「有田IC」から約60分 |
| 公共交通機関 | JR「藤並」駅から有田鉄道の路線バスで 約60分、バス停「三田」下車すぐ |
| Link | あらぎ島/有田川町 あらぎ島 – 有田川町観光 |
久野原の棚田
「あらぎ島」のような特異な形状をした田園ではないが、有田川町の久野原地区にも日本の原風景とも呼びたくなるような田園風景が残されている。

久野原地区の棚田は「つなぐ棚田遺産(ポスト棚田百選)」(農林水産省)に選ばれている。

秋分の日の前後には曼珠沙華(彼岸花)が田んぼの畦道に咲き、その赤色の花とイネの穂とコントラストが鮮やかであるという。

| 名 称 | 久野原地区の田園風景 |
| 所在地 | 和歌山県有田川町久野原 |
| Link | つなぐ棚田遺産:農林水産省 「つなぐ棚田遺産」に県内8地区が認定- 和歌山経済新聞 |
下赤阪の棚田
下赤阪の棚田は、楠木正成の戦いの地として知られる赤阪城址の近くに位置する。「日本の棚田百選」にも選ばれた棚田である。

残念ながら私たちが訪れたときは、工事中のため赤阪城址へは行けなかったので、棚田を見下ろすアングルで写真を撮れなかったのは非常に残念であった。棚田は見下ろすアングルの方が綺麗に撮れると私は思っている。

| 名 称 | 下赤阪の棚田 |
| 所在地 | 大阪府千早赤阪村大字森屋 |
| 駐車場 | なし |
| Link | 下赤阪の棚田 | 千早赤阪村 下赤阪の棚田/千早赤阪村 |
東後畑の棚田
東後畑の棚田は、本州最西北端の向津具【むかつく】半島の油谷地区に位置する棚田である。

日本海を眼下に見下ろす位置にある水田は、天候や日時によって異なる景観を創出する。どれも優美な景観であるが、人それどれの好みというものもあるので優劣はつけられない。

特に5~8月には日没後棚田の向こうにイカ釣り漁船の漁り火が見え、その漁り火と水田のコラボレーションは被写体として多くの写真愛好家に支持されているようだ。

私が訪れた際にもベストショットを撮ろうとする写真愛好家の三脚が撮影場所となる道路脇に所狭しと立ち並んでいた。

を撮るために待機する人々

を撮ろうとする人々
残念ながら、私は三脚を準備していなかったので、漁り火の写真を上手く撮れなかったのは残念であった。いつの日かリベンジしたいものである。
| 名 称 | 東後畑の棚田 |
| 所在地 | 山口県長門市油谷東後畑 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 東後畑棚田 | 山口県長門市 東後畑棚田|山口県観光 東後畑の棚田 – 長門市HP |
写真撮影したい棚田35選
| 地 名 | 所在地 |
|---|---|
| 白米の千枚田 | 石川県輪島市 |
| よこね田んぼ | 長野県飯田市千代 |
| 大栗安の棚田 | 静岡県浜松市 |
| 滝町の棚田 | 岐阜県高山市 |
| 正ヶ洞の棚田 | 岐阜県郡上市 |
| 深野だんだん田 | 三重県松阪市 |
| 丸山千枚田 | 三重県熊野市 |
| 畑(はた)の棚田 | 滋賀県高島市 |
| 別宮の棚田 | 兵庫県養父市別宮 |
| 岩座神の棚田 | 兵庫県多可町岩座神 |
| うへ山の棚田 | 兵庫県香美町小代区貫田 |
| 稲渕の棚田 | 奈良県明日香村稲渕 |
| あらぎ島の棚田 | 和歌山県有田川町清水 |
| 久野原の棚田 | 和歌山県有田川町久野原 |
| 下赤阪の棚田 | 大阪府千早赤阪村 |
| 西田ヨズクの里 | 島根県太田市 |
| 東後畑の棚田 | 山口県長門市油谷 |
| 中山千枚田 | 香川県小豆島町中山 |
| 井内の棚田 | 愛媛県東温市 |
| 奥内の棚田 | 愛媛県松野町蕨生 |
| 広内・上原地区棚田 | 福岡県星野村 |
| 葛篭(つづら)棚田 | 福岡県うきは市浮羽町新川 |
| 土谷棚田 | 長崎県松浦市福島 |
| 清水棚田 | 長崎県雲仙市千々石 |
| 扇棚田 | 熊本県産山村 |
| 内成(うちなり)棚田 | 大分県別府市 |
| 田染荘小崎の棚田 | 大分県豊後高田市 |
| 鳥の巣の棚田 | 宮崎県五ヶ瀬町三ヶ所鳥の巣 |
| 下の原の棚田 | 宮崎県五ヶ瀬町三ヶ所上日陰 |
| 日蔭の棚田 | 宮崎県五ヶ瀬町鞍岡下長司 |
| 坂元棚田 | 宮崎県日南市酒谷甲坂元 |
| 向江棚田 | 宮崎県西米良村上米良二 |
| 春之平棚田 | 宮崎県西米良村 |
| 椎葉のマチュピチュ 「下松尾仙人の棚田」 | 宮崎県椎葉村 |
| 新永吉の棚田 | 宮崎県指宿市 |
◆ あとがき
棚田の風景写真を見て美しいと感じる人なら、実際に棚田を目にした際には、きっと深い感動を覚えるだろう。棚田は、日本の原風景ともいえる貴重な文化的資産であり、後世に引き継ぐべき「日本の宝」の一つである。維持管理は決して容易ではないが、何とか知恵を寄せ合い、その存続の道を探り続けていきたいと願っている。
現在、「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」として271地区が選定されているが、これは棚田保全の取り組みの一環にすぎない。選定されたからといって、棚田の保全が自動的に保証されるわけではない。
では、今から約22年前に選ばれた「日本の棚田百選」の棚田は、現在どのような状況にあるのだろうか。私自身、「日本の棚田百選」に選ばれた棚田の多くを実際に訪れたわけではない。そこで、「日本の棚田百選(134地区)」と「つなぐ棚田遺産(271地区)」のリストを比較してみた。
「つなぐ棚田遺産」は「棚田百選」の約2倍の地区数をカバーしているため、もし「棚田百選」に選ばれた棚田が現在も健全に維持されているのであれば、当然その多くが「つなぐ棚田遺産」にも選ばれているはずだと考えた。逆に、リストに名前が見当たらない棚田は、残念ながら荒廃し、姿を消してしまった可能性が高いと推察した。
両リストを照合した結果、「日本の棚田百選」134地区のうち、実に43地区がこの22年間で姿を消していることが分かった。割合にして約32.1%、つまり約3分の1の棚田が失われた計算になる(下表参照)。誠に残念な結果である。「つなぐ棚田遺産」に選ばれた271地区が、同じ道を辿ることのないよう切に願っている。
| 有無 | 地 名 | 所在地 |
|---|---|---|
| 山吹の棚田 | 岩手県一関市大原山吹 | |
| 沢尻の棚田 | 宮城県丸森町 | |
| X | 西山の棚田 | 宮城県栗駒町 |
| X | 椹平の棚田 | 山形県朝日町 |
| 大蕨の棚田 | 山形県山辺町中村 | |
| 四ヶ村の棚田 | 山形県大蔵村 | |
| 石畑の棚田 | 栃木県茂木町石畑 | |
| X | 国見の棚田 | 栃木県烏山 |
| 大山千枚田 | 千葉県鴨川市大山 | |
| X | 宇坪入の棚田 | 長野県小諸市 |
| 稲倉の棚田 | 長野県上田市殿城 | |
| X | 姫子沢の棚田 | 長野県東部町 |
| X | 滝の沢の棚田 | 長野県東部町 |
| よこね田んぼ | 長野県飯田市千代 | |
| X | 重太郎の棚田 | 長野県八坂村 |
| 青鬼集落の棚田 | 長野県白馬村 | |
| X | 慶師沖の棚田 | 長野県長野市 |
| 根越沖の棚田 | 長野県長野市根越沖 | |
| 姨捨(おばすて)の棚田 | 長野県千曲市姨捨 | |
| X | 塩本の棚田 | 長野市塩本 |
| 栃倉の棚田 | 長野県長野市栃倉 | |
| 大西の棚田 | 長野県長野市大西 | |
| 田沢沖の棚田 | 長野県長野市田沢沖 | |
| X | 福島新田の棚田 | 飯山市瑞穂 |
| X | 上船倉の棚田 | 上越市安塚区 |
| X | 狐塚の棚田 | 新潟県土日町 |
| X | 蓮野の棚田 | 新潟県大島村 |
| 花坂の棚田 | 新潟県柏崎市 高柳町石黒 | |
| 梨ノ木田の棚田 | 新潟県柏崎市高柳町高尾 | |
| X | 大開の棚田 | 新潟県柏崎市 |
| 北五百川の棚田 | 新潟県三条市森町 | |
| 長坂集落の棚田 | 富山県氷見市 | |
| 三乗集落の棚田 | 富山県富山市八尾町高峯 | |
| X | 奥山田の棚田 | 石川県津幡町 |
| 大笹波水田 | 石川県志賀町 | |
| 白米の千枚田 | 石川県輪島市 | |
| X | 梨子ヶ平地区千枚田 | 福井県越前町 |
| X | 日引の棚田 | 福井県高浜町 |
| 久留女木の棚田 | 静岡県浜松市 | |
| 大栗安の棚田 | 静岡県浜松市 | |
| 荒原の棚田 | 静岡県伊豆市 | |
| X | 下ノ段の棚田 | 静岡県伊豆市 |
| 北山の棚田 | 静岡県沼津市新田 | |
| 上代田の棚田 | 岐阜県八百津町北山 | |
| 坂折の棚田 | 岐阜県恵那市中野方町 | |
| 四谷の千枚田 | 愛知県新城市四谷 | |
| X | 長江の棚田 | 愛知県設楽町 |
| 丸山千枚田 | 三重県熊野市 | |
| 深野のだんだん田 | 三重県松阪市紀和町 | |
| X | 坂本の棚田 | 三重県亀山市 |
| 畑【はた】の棚田 | 滋賀県高島市 | |
| 毛原の棚田 | 京都府福知山市 | |
| 袖志の棚田 | 京都府京丹後市 | |
| 下赤阪の棚田 | 大阪府千早赤阪村 | |
| 長谷の棚田 | 大阪府能勢町長谷 | |
| 岩座神の棚田 | 兵庫県香美町 | |
| X | 乙大木谷の棚田 | 兵庫県佐用町 |
| うへ山の棚田 | 兵庫県香美町小代区貫田 | |
| X | 西ヶ岡の棚田 | 兵庫県香美町 |
| 神奈備の郷(稲渕)の棚田 | 奈良県明日香村稲渕 | |
| あらぎ島の棚田 | 和歌山県有田川町清水 | |
| 横尾の棚田 | 鳥取県岩美町 | |
| 巻【つく】米の棚田 | 鳥取県若桜町 | |
| 中垣内の棚田 | 島根県益田市中垣内 | |
| 山王寺の棚田 | 島根県雲南市大東町山王寺 | |
| 大原新田の棚田 | 島根県奥出雲町大馬木 | |
| X | 神谷の棚田 | 島根県巴南町 |
| 都川の棚田 | 島根県浜田市旭町都川 | |
| 室谷の棚田 | 島根県浜田市三隅町室谷 | |
| 大井谷の棚田 | 島根県吉賀町柿木村白谷 | |
| 北庄の棚田 | 岡山県久米南町 | |
| 上籾の棚田 | 岡山県久米南町 | |
| 小山の棚田 | 岡山県旭町 | |
| 大垪和西棚田 | 岡山県三咲町大大垪和西 | |
| 井仁【いに】の棚田 | 広島県安芸太田町筒賀 | |
| 東後畑の棚田 | 山口県長門市油谷 | |
| 樫原の棚田村 | 徳島県上勝町 | |
| X | 下影の棚田 | 三好市井川町 |
| 中山千枚田 | 香川県小豆島町中山 | |
| X | 泉谷の棚田 | 内子町北表 |
| X | 堂の坂の棚田 | 愛媛県城川町 |
| 奥内の棚田 | 愛媛県松野町蕨生 | |
| 神在居の千枚田 | 高知県檮原町 | |
| 広内・上原地区棚田 | 福岡県星野村 | |
| 葛篭棚田 | 福岡県うきは市浮羽町新川 | |
| X | 白川の棚田 | 福岡県甘木市 |
| 竹の棚田 | 福岡県東峰村宝珠山 | |
| 蕨野の棚田 | 佐賀県唐津市相知町平山上蕨野 | |
| 大浦の棚田 | 佐賀県唐津市肥前町大浦 | |
| 浜野浦の棚田 | 佐賀県玄海町 | |
| 岳の棚田 | 佐賀県西有田町 | |
| 江里山の棚田 | 佐賀県小城市江里山 | |
| X | 西の谷の棚田 | 佐賀市富士 |
| 鬼木棚田 | 長崎県波佐見町 | |
| 土谷棚田 | 長崎県松浦市福島 | |
| 日向の棚田 | 長崎県川棚町 | |
| 大中尾棚田 | 長崎県長崎市外海 | |
| X | 谷水の棚田 | 南島原市南有馬 |
| X | 清水棚田 | 雲仙市千々石 |
| 扇棚田 | 熊本県産山村 | |
| X | 日光の棚田 | 八代市坂本町 |
| X | 天神木場の棚田 | 熊本県東陽町 |
| X | 美生の棚田 | 熊本県東陽町 |
| 大作山の千枚田 | 熊本県上天草市龍ヶ崎岳 | |
| 静趣活創棚田・番所 | 熊本県山鹿市菊鹿 | |
| X | 鬼の口棚田 | 熊本県球磨村 |
| X | 松谷棚田 | 熊本県球磨村 |
| X | 寒川地区棚田 | 熊本県水俣市 |
| X | 峰棚田 | 熊本県山都町 |
| 菅迫田の棚田 | 熊本県山都町菅 | |
| X | 由布川奥詰の棚田 | 大分県由布市 |
| 内成棚田 | 大分県別府市 | |
| X | 軸丸北の棚田 | 豊後大野市 |
| 山浦早水の棚田 | 大分県玖珠町山浦早水 | |
| 両合棚田 | 宇佐市院内 | |
| X | 羽高棚田 | 大分県山国町 |
| X | 真幸棚田 | えびの市 |
| 尾戸の口の棚田(神々の里) | 宮崎県高千穂町岩戸 | |
| 栃又の棚田 | 宮崎県高千穂町三田井 | |
| 徳別当の棚田 | 宮崎県高千穂町押方 | |
| 石垣の村の棚田 | 宮崎県日之影町戸川 | |
| 鳥の巣の棚田 | 宮崎県五ヶ瀬町三ヶ所鳥の巣 | |
| 下の原の棚田 | 宮崎県五ヶ瀬町三ヶ所上日陰 | |
| 日蔭の棚田 | 宮崎県五ヶ瀬町鞍岡下長司 | |
| 坂元棚田 | 宮崎県日南市酒谷甲坂元 | |
| 向江棚田 | 宮崎県西米良村上米良二 | |
| 春之平棚田 | 宮崎県西米良村 | |
| X | 内之尾の棚田 | 県入来町 |
| くりの町幸田の棚田 | 鹿児島県栗野町 | |
| X | 佃の棚田 | 顈娃町 |
(作成者:著者、作成日:2023年8月27日)