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  • 白山国立公園を歩く──名瀑と秘湯に出会う静かな旅

    目次
    はじめに
    白山国立公園の自然と歴史
    名瀑を歩く──白山の水が刻んだ景観
    ふくべの大滝
    水法の滝
    姥ヶ滝
    かもしかの滝
    岩底の滝
    赤石の滝
    後高滝
    百四丈滝
    白水滝
    不動滝
    綿ヶ滝
    森に抱かれる散策の時間
    刈込池
    白水湖
    白山神社のカツラ
    滝石徹白の大杉
    岩間の噴泉塔群
    山あいの秘湯を訪ねて
    鳩ヶ湯温泉
    中宮温泉
    新岩間温泉
    岩間温泉
    あとがき

    はじめに

    白山国立公園は、白山を中心に富山・石川・福井・岐阜の四県にまたがる広大な国立公園で、深い森と清らかな水が息づく北陸随一の自然の宝庫です。指定区域は、標高2,702mの御前峰【ごぜんがみね】を中心に、東西約20km・南北約40kmに広がる両白山地【りょうはくさんち】の主要な山域で構成されています。白山信仰の歴史とともに守られてきたこの山域には、手つかずの自然が今も静かに息づいています。

    白山の谷あいには、名瀑と呼ばれる滝が数多く点在しています。山肌を流れ落ちる水は長い年月をかけて岩を削り、谷に響く水音は旅人の心をそっと整えてくれます。森を歩けば、木々の間を抜ける風がやわらかく頬を撫で、鳥の声が遠くから届き、白山の自然が持つ静寂がゆっくりと広がります。

    さらに、山あいには鳩ヶ湯温泉、中宮温泉、岩間温泉、新岩間温泉など、秘湯と呼ばれる温泉地が点在しています。湯に身を沈めると体の芯まで温まり、歩き旅の疲れがふっとほどけていきます。白山の森と水に抱かれた温泉は、まさに「静かな癒し」の時間をもたらしてくれる場所です。

    本稿では、白山国立公園の名瀑と秘湯を歩きながら、森に包まれる静かな時間と、自然がもたらす深い癒しの旅情をゆっくりとたどってみたいと思います。


    白山国立公園の自然と歴史

    白山【はくさん】は古来より霊山として崇められ、立山・富士山とともに日本三霊山の一つに数えられています。奈良時代の717年、修験道の僧・泰澄【たいちょう】が白山を開山したと伝えられ、以来、白山は北陸一帯の信仰の中心として人々の祈りを集めてきました。

    驚くべきことに、すでに832年には越前・加賀・美濃の三方から白山へ向かう登拝道、いわゆる禅定道【ぜんじょうどう】が開かれています。禅定道とは、霊山の頂を目指すための登山道のことで、当時の人々が白山をどれほど深く信仰していたかがうかがえます。

    三つの禅定道の起点は、

    • 平泉寺白山神社(越前)
    • 白山比咩神社(加賀)
    • 長滝白山神社(美濃)

    の三社であり、白山山頂には718年に建立された白山比咩神社【しらやまひめじんじゃ】の奥宮が鎮座しています。山頂部には翠ヶ池【みどりがいけ】、紺屋ヶ池【こんやがいけ】など七つの火口湖が点在し、活火山としての白山の姿を今に伝えています。


    白山スーパー林道から白山白川郷ホワイトロードへ

    昭和52年(1977年)8月26日に開通した白山スーパー林道(正式名称:白山林道)は、白山国立公園の特別保護地区を横断する唯一の自動車専用道路として整備されました。石川県白山市尾添と岐阜県白川村鳩谷を結び、総延長33.3km(石川県側18.6km、岐阜県側14.7km)に及びます。

    森林開発公団が特定森林地域開発林道事業として整備した道路で、国道360号の不通区間を補完する役割も担っています。石川県側では県が管理する唯一の有料道路であり、山岳地帯を走る道路としては当時画期的な存在でした。

    2015年4月1日、道路の愛称は白山白川郷ホワイトロードへと変更されました。「林道」という言葉が未舗装の難路を連想させるため、両県が公募により新しい名称を決定したものです。現在は、標高600〜1450mの山岳地帯を走る観光道路として親しまれ、ブナ原生林や高山植物など、白山北側の豊かな自然を間近に楽しむことができます。

    蛇谷渓谷の深いV字谷に沿って走る区間や、国見山・三方岩岳を越えるつづら折れの道は、白山の山岳景観を体感できる人気のルートです。


    白山白川郷ホワイトロード周辺の見どころ

    石川県側には、沿道周辺に「ふくべの大滝」をはじめとする多くの名瀑が点在し、変化に富んだ滝の景観を楽しめます。白山の水が刻んだ自然の造形美は、訪れる者の心を静かに揺さぶります。

    岐阜県側には、世界文化遺産「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として知られる白川郷があります。白山の自然と合掌造りの文化が隣り合うこの地域は、山岳信仰と人々の暮らしが重なり合う貴重な文化景観です。


    名瀑を歩く──白山の水が刻んだ景観

    白山国立公園の谷あいには、長い年月をかけて岩を削り続けてきた名瀑が静かに息づいています。山肌を流れ落ちる水は、季節ごとに色を変えながら、白山の自然が刻んできた時間の深さを旅人にそっと伝えてくれます。

    滝へ向かう遊歩道を歩くと、森の香りがふっと漂い、木々の間を抜ける風がやわらかく頬を撫でます。水音が近づくにつれ、谷の静けさがゆっくりと深まり、滝の前に立つと、白山の水が生み出した景観の力強さと美しさが一気に視界へ広がります。名瀑を歩く時間は、白山の自然と静かに向き合う、心を整えるひとときです。


    ふくべの大滝

    白山白川郷ホワイトロードの石川県側に位置する「ふくべの大滝」は、白山の名瀑の中でもひときわ存在感を放つ大滝です。高さ約86メートルの落差を誇り、白山の山肌を流れ落ちる水が一気に谷へと落ち込む姿は、まさに圧巻の一言です。滝の前に立つと、落水が岩を削り続けてきた長い年月の重みが感じられ、谷に響く水音が旅人の心を静かに揺らします。

    展望台から眺めるふくべの大滝は、白山の深い森に抱かれながら、白い水煙を上げて流れ落ちる姿が美しく、季節ごとにまったく違う表情を見せます。新緑の頃は滝の白さが森の緑に映え、夏は水量が増して迫力が増し、秋には紅葉に彩られた谷に滝の白が浮かび上がり、冬には凍結して巨大な氷瀑となることもあります。

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    ふくべの大滝(石川県白山市)
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    ふくべの大滝

    滝へ向かう道のりは比較的歩きやすく、森を抜ける風や谷から響く水音が心地よく、歩くほどに白山の自然と静かに向き合う時間が深まります。ふくべの大滝は、白山の水が刻んできた景観の美しさと力強さを体感できる、白山白川郷ホワイトロードを代表する名瀑です。

    白山白川郷ホワイトロードを通行中にふくべの大滝を間近くで見ることができました。落差が86mもある大滝は、「日本の瀧百選」には選ばれていませんが、十分に名瀑だと思います。この滝の上にももう一つの大きな滝があることから、「ふくべ」(瓢箪【ひょうたん】の意味)と名付けられました。

    ふくべの大滝の近くには駐車場が完備されており、そこから滝がよく見えます。絶好の「滝見台(観瀑台)」なので、沿道随一の名所となっています。

    名 称ふくべの大滝
    所在地石川県白山市中宮
    白山白川郷ホワイトロード内
    駐車場あり(無料)
    Linkふくべの大滝|石川旅ねっと

    水法の滝

    水法の滝【みずのりのたき】は、白山を源流にする尾添川の上流に位置する蛇谷に注ぎ込む谷に懸かる滝で、落差が約80mもある分岐瀑です。

    姥ケ滝駐車場近くのトンネルに流れ込む滝であるため岐阜方向から来ると見落とすことは無いですが、石川方向から行くと見落としてしまいます。近くに駐車しやすい場所がないのも見逃しやすい原因であるかも知れません。

    名 称水法の滝
    Link水法の滝:金沢観光情報

    姥ヶ滝

    姥ヶ滝【うばがたき】は、落差は111m(幅41m)もあり、「日本の瀧百選」にも選出されている滝です。

    姥ヶ滝は、岩肌に沿ってなめらかに流れ落ちる滝です。白く細い流れを老婆の白髪に見立ててこの名が付いたと言われています。

    白山白川郷ホワイトロードの途中にある蛇谷園地駐車場から遊歩道を歩いて行くと、「親谷の湯」(野天風呂・足湯)から滝が眺望できます。

    名 称姥ヶ滝
    所在地石川県白山市中宮
    白山白川郷ホワイトロード内
    駐車場あり(無料)
    Link姥ヶ滝|白山白川郷
    姥ヶ滝|ほっと石川旅ねっと

    かもしかの滝

    かもしかの滝は、石川県側から白山白川郷ホワイトロードを走行していると4番目(岩底の滝の次)に見える、落差40mの五段になって流れ落ちる滝です。蛇谷大橋を渡ってすぐにある滝です。

    この滝の近辺は天然記念物であるニホンカモシカの生息密度が高いことが滝の名の由来になっています。

    名 称かもしかの滝
    所在地石川県白山市中宮蛇谷大橋
    白山白川郷ホワイトロード内
    駐車場あり(無料)
    Linkかもしか滝【石川県白山市】

    岩底の滝

    岩底の滝【かまそこのたき】は、石川県側から白山白川郷ホワイトロードを走行していると3番目(赤石の滝の次)に見える滝です。

    滝の上部に直径2mの釜型の大木を沈めてしまうような「底無しの淵」があることが滝の名の由来になっています。残念ながら、滝の近くへは行けません。

    名 称岩底の滝【かまそこのたき】
    所在地石川県白山市中宮
    白山白川郷ホワイトロード内
    駐車場あり(無料)
    Link岩底の滝:金沢観光情報
    岩底の滝【石川県白山市】

    赤石の滝

    赤石の滝【あかちのたき】は、石川県側から白山白川郷ホワイトロードを走行していると2番目(しりたかの滝の次)に見える落差30mの滝です。かつて金を採掘した所で、ベニ石(赤石)がイボ状に岩に付いていたことが滝の名の由来だと言われています。

    赤石の滝は、斜めに落ちてくる滝で、水量の多い時には途中から水流が三本に別れるので「三味線の滝」とも呼ばれています。

    名 称赤石の滝【あかちのたき】
    所在地石川県白山市中宮
    白山白川郷ホワイトロード内
    駐車場なし
    Link赤石の滝:金沢観光情報
    赤石の滝・石川県白山市

    後高滝

    後高滝【しりたかのたき】は、白山白川郷ホワイトロードを石川県側から走り始めると最初に姿を見せる名瀑で、後高山【しりたかやま】を源流としています。深い谷間にひっそりと流れ落ちる滝は、白い絹を垂らしたような柔らかな流れが特徴で、三段に分かれて落ちる姿がとても美しい滝です。

    落差は約50メートルとされ、ホワイトロードの沿道からでもその姿を望むことができます。周囲の木々の緑に滝の白が映え、谷に響く水音が旅人の心を静かに整えてくれます。ふくべの大滝のような豪快さはありませんが、その分、森の静けさが際立ち、白山の自然が持つ“しなやかな美しさ”を感じられる滝です。

    春は新緑に包まれ、夏は水量が増して涼やかな風が漂い、秋には紅葉が滝を彩り、冬には雪に覆われて静寂がさらに深まります。季節ごとに異なる表情を見せる後高滝は、白山白川郷ホワイトロードの旅の始まりにふさわしい、心を落ち着かせる名瀑です。

    名 称後高滝
    所在地石川県白山市中宮
    白山白川郷ホワイトロード内
    駐車場なし
    Linkしりたか滝

    百四丈滝

    百四丈滝【ひゃくよじょうのたき】は、石川県白山市を流れる尾添川【おぞがわ】にかかる滝で、白山有数の巨瀑であると言われています。落差は90m、幅は10mもあるといいます。七倉山【ななくらやま】の北側に広がる雄大な清浄ヶ原の斜面から流れ落ちる滝の様子はダイナミックな景観で人気が高いです。加賀禅定道の尾根から眺めることができます。

    百四丈滝は、完全な直瀑で、水流は滝壺に至るまで岩壁に一切触れることがありません。そのため滝の裏側に周り込むことができる、いわゆる「裏見の滝」となっています。裏見の滝としては、国内最大級の規模を誇ると言われています。

    1987年に加賀禅定道が復元されるまでは、 一般登山者の目に触れることのない「幻の滝」とされていました。「日本の瀧百選」のリストには載っていませんが、名瀑であることに相違ありません。

    名 称百四丈滝
    所在地石川県白山市尾添 百四丈滝
    Link百四丈滝|石川旅ねっと

    白水滝

    白水滝【しらみずのたき】は、大白水谷に位置し、原生林に囲まれた絶壁から流れ落ちる勇壮な滝(落差72m、幅8m)です。流水が乳白色に見えることが滝名の由来らしいです。

    滝展望台までは白水滝駐車場らら遊歩道で徒歩5分程度です。「日本の瀧百選」には選出されていませんが、名瀑であることに相違ありません。岐阜県の名勝には指定されています。

    名 称白水滝
    所在地岐阜県白川村平瀬大白川
    駐車場あり(無料)白水滝駐車場
    Link白水の滝/白川郷 | 白川村役場

    不動滝

    不動滝は、井田の三穂の峰より流れ落ちる落差約20mの滝で、滝つぼ横に不動尊が安置されていることが滝名の由来とされています。

    不動滝の近くには不動堂も建てられており、眼の病気や頭痛に霊験があるとされています。

    名 称不動滝
    所在地石川県鹿島郡中能登町井田
    Link不動滝|ほっと石川旅ねっと

    綿ヶ滝

    綿ヶ滝【わたがたき】は、手取峡谷にある落差32mの滝です。綿が舞っているように滝の流れの飛沫が見えることが滝名の由来であるとされています。

    駐車場から遊歩道を150mほど歩いたところにある展望台から綿ヶ滝を見ることができます。

    名 称綿ヶ滝
    所在地白山市下吉谷町ホ1-4
    駐車場あり(無料)
    Link綿ヶ滝 | 白山手取川
    綿ヶ滝|白山市観光

    森に抱かれる散策の時間

    白山国立公園の森を歩いていると、名瀑の水音が次第に遠ざかり、代わりに木々のざわめきや風の通り道がそっと耳に届きます。深い森の中では、光が枝葉の間からこぼれ、足元には苔むした岩や落ち葉が静かに広がり、白山の自然が持つ柔らかな気配がゆっくりと旅人を包み込みます。

    歩くほどに、森の香りがふっと漂い、鳥の声が遠くから響き、時間がゆっくりとほどけていくような感覚が生まれます。名瀑の迫力とは対照的に、森の散策は白山の“静の美”を味わうひとときであり、自然と向き合う旅の深さをそっと教えてくれます。


    刈込池

    刈込池【かりこみいけ】は、九頭竜川の支流である打波川の上流に位置する、願経寺山(標高1,690m)の麓の幅ヶ平にある湖沼です。昔、泰澄大師が白山に棲んでいた大蛇を刈込池にとじ込め(刈り込め)たという伝説が名前の由来となっているそうです。

    刈込池の周囲は約400mで、水深は最大4.5mであるといいます。刈込池に流れ込む小川はありますが、流れ出る河川がなく一定の水位が保たれている、不思議な池です。池の周囲はブナやミズナラなどの広葉樹に覆われています。そのため福井県を代表する紅葉スポットの一つとなっており、多くの観光客が訪れます。

    名 称刈込池
    所在地福井県大野市上打波
    駐車場あり(無料)小池公園
    Link刈込池 大野市

    白水湖

    白水湖【しらみずこ】は、県道451号線(県道白山公園線)の終点に位置する、大白川ダムによるダム湖です。硫黄分を含む湖水の湖面は神秘的なエメラルドグリーンに輝いて見えます。

    例年10月初旬頃から下旬頃にかけて美しい紅葉が楽しめます。但し、白水湖へ通じる県道白山公園線は10月末頃から翌年6月上旬頃まで冬期閉鎖されるので、道路情報を事前に確認する必要があります。

    名 称白水湖
    所在地岐阜県白川村平瀬大白川
    Link白水湖 /白川村

    白山神社のカツラ

    白山神社のカツラは、根回りが15mで、樹高が約29mの巨樹です。樹齢は1200年超と推定されており、福井県の天然記念物として指定されています。

    養老元年(717年)に泰澄大師が白山登頂の途中、この地で食事に使った箸を大地に挿したのが芽を出し、現在のような巨樹になったと伝えられています。このカツラの巨樹は、白山神社の御神木として保護されています。

    名 称白山神社のカツラ
    所在地福井県大野市下打波
    駐車場あり(無料)
    Link白山神社の大カツラ
    白山神社のカツラの大木

    石徹白の大杉

    石徹白の大杉【いとしろのおおすぎ】は、 美濃禅定道沿いにあるスギ(杉)の巨樹です。幹回りは13.4mで、樹高は24mもあります。 樹齢は1,800余年と推定されており、国の特別天然記念物に指定されています。

    泰澄上人(大師)が白山を開山した際、使用していた杖がこの大杉になったという伝説が残っています。幹の半分は枯れてしまっていますが、残りの半分は現在も健在です。

    名 称石徹白の大杉
    所在地岐阜県郡上市白鳥町石徹白
    Link石徹白大杉|岐阜県観光

    岩間の噴泉塔群

    岩間の噴泉塔群【ふんせんとうぐん】は、岩間温泉の上流部にある噴泉塔群のことで、国の特別天然記念物に指定されています。

    噴泉塔【ふんせんとう】とは石灰華【せっかいか】が塔状になったものを指します。温泉成分が空気に触れ、沈殿物(主要成分として炭酸カルシウム・水酸化マグネシウム)となり、それが固まって長い年月の間に塔のような形状になったものが噴泉塔です。

    名 称岩間の噴泉塔群
    所在地石川県白山市尾添
    Link岩間の噴泉塔群

    山あいの秘湯を訪ねて

    白山国立公園の山あいには、長い歴史の中でひっそりと守られてきた温泉が点在しています。名瀑の水音が遠ざかり、森の静けさが深まる頃、谷を抜ける風がふっと温度を変え、湯の気配がどこかから漂ってくるように感じられます。

    鳩ヶ湯温泉、中宮温泉、岩間温泉、新岩間温泉──いずれも山の懐に抱かれた静かな湯処で、湯に身を沈めると体の芯まで温まり、歩き旅の疲れがゆっくりとほどけていきます。白山の森と水に寄り添うように湧く秘湯は、自然がもたらす癒しを深く味わうための、旅人にとって特別な時間を与えてくれます。


    鳩ヶ湯温泉

    鳩ヶ湯温泉【はとがゆおんせん】は、九頭龍渓谷の打波川の山道の終点付近にある1軒宿の温泉地です。泉質は、ナトリウム炭酸塩泉です。冷泉のため加温して、使用します。営業は、例年4月下旬から11月下旬までの期間で、冬季は休業しています。日本秘湯を守る会会員の宿でもあります。

    鳩ヶ湯温泉は、福井県道173号上小池勝原線の沿線にあります。北陸自動車道福井ICから国道158号を経由して県道173号に入ります。所要時間は、北陸自動車道福井ICから約1時間20分かかります。 

    鳩ヶ湯温泉の北側には両白山地の別山【べっさん】(標高2,399 m)と三ノ峰【さんのみね】(標高2,128 m)を望むことができます。

    刈込池【かりこみいけ】、赤兎山【あかうさぎやま】(標高1,629 m)や荒島岳【あらしまだけ】(別名、大野富士;標高1,523 m)などへの登山口となっています。また、イワナやアマゴなどの渓流釣りのベース地にもなっています。

    名 称鳩ヶ湯温泉
    所在地大野市上打波6-2 鳩ヶ湯温泉
    駐車場あり(無料)
    Link鳩ヶ湯温泉

    中宮温泉

    中宮温泉【ちゅうぐうおんせん】は、開湯から1200年の歴史がある温泉地です。霊泉とされ、1574年には初めて浴室が設けられるなどの長い歴史を有します。

    泉質は、ナトリウム – 塩化物・炭酸水素塩泉(低張性中性高温泉)です。源泉温度は61℃で十分に熱いです。お湯の色は湧出当初は無色透明ですが酸化して黄褐色になる、とろみのあるお湯です。飲泉も可能で、胃腸に効能があるとされます。

    旅館は2軒(にしやま旅館湯宿くろゆり)で、共同の露天風呂「薬師の湯」が利用できます。

    白山白川郷ホワイトロードの無料区間内にある温泉地であるため、道路が閉鎖される冬季(12月~4月)は休業となります。

    名 称中宮温泉
    所在地石川県白山市中宮ク5-1-12(にしやま旅館)
    石川県白山市中宮ク5-32(湯宿くろゆり)
    駐車場あり(無料)
    Linkにしやま旅館|白山市
    温泉 | にしやま旅館
    湯宿くろゆり|白山市
    白山中宮温泉 湯宿くろゆり

    新岩間温泉

    新岩間温泉【しんいわまおんせん】は、石川県白山市尾添にある温泉で、上流の岩間温泉の引湯です。1軒宿の山崎旅館が営業していますが、冬季(11月~5月中旬)は休業(11月 – 5月中旬)します。 露天風呂は現在では珍しくなった混浴です。日本秘湯を守る会会員の宿でもあります。

    名 称新岩間温泉
    所在地石川県白山市尾添ム4-1
    駐車場あり(無料)
    Link岩間温泉 山崎旅館

    岩間温泉

    岩間温泉【いわまおんせん】は、新岩間温泉の山崎旅館付近の駐車場から徒歩約50分の場所に位置する温泉です。岩間温泉にもかつては宿があったようですが、残念ながら現在は存在しません。露天風呂(野湯)があるのみである。泉質は、塩化ナトリウム物泉です。下流の新岩間温泉元湯になっています。

    岩間温泉からさらに上流に1時間ほど歩くと、国の特別天然記念物の「岩間の噴泉塔群」があります。

    名 称岩間温泉
    Link白山麓秘湯 岩間温泉山崎旅館
    岩間温泉 山崎旅館

    あとがき

    白山国立公園を歩いていると、名瀑の水音、森を渡る風、秘湯の湯ざわり──それらが重なり合い、自然がもつ静かな力がゆっくりと心に染み渡っていきます。歩くほどに、白山の森と水が旅人の心を整えてくれるのを実感します。

    本稿を書きながら、白山国立公園の指定区域内には想像以上に多くの滝が存在することを改めて知りました。滝の前に立つと、水が岩を削り続けてきた長い時間の流れが感じられ、森の中では木々の息づかいが旅人を包み込みます。旅に出る前にこのことを知っていれば、もっと多くの名瀑を訪ねることができたかもしれない──そう思うと少し残念ですが、次の機会には見逃すことのないようにしたいものです。

    滝だけでなく、湖沼や天然記念物など、白山国立公園には多彩な景勝地が点在しています。国立公園として守られてきた自然の価値を、歩くほどに深く理解できました。これらの場所も、いつか自分の目で確かめてみたいと思います。

    そして温泉地についてですが、鳩ヶ湯温泉、中宮温泉、岩間温泉、新岩間温泉など、白山国立公園の山あいに「秘湯」と呼ばれる温泉地が点在していることを今回初めて知りました。知ってしまったからには、行かない手はありません。「秘湯」という響きだけでも旅心をくすぐられます。次の旅では、ぜひ訪ねてみたいと思います。

    秘湯に身を沈めれば、体の芯まで温まり、日常の緊張がほどけていくような深い癒しが広がります。白山国立公園は、ただの観光地ではなく、自然の静寂と旅情が寄り添う「心を整える場所」です。歩き終えたあと、森の香りを胸に残したまま山を後にすると、旅の記憶として長く寄り添う静かな余韻がそっと残ります。


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