月: 2024年9月

  • 女人高野・慈尊院──空海の母公に捧げられた祈りの場所

    はじめに

    高野山の麓・九度山の里に佇む慈尊院は、弘法大師空海の母・玉依御前ゆかりの寺として、古くから「女人高野」と呼ばれてきた。 かつて高野山が女人禁制であった時代、女性たちはこの慈尊院で祈りを捧げ、ここから山上を遥かに仰ぎ見ていたという。 その静かな祈りの積み重ねが、いまも境内の空気にそっと息づいている。

    玉依御前は生前、慈尊院の御本尊である弥勒菩薩を深く信仰し、この地で最期を迎えたと伝えられる。 空海は母の霊を弥勒菩薩とともに祀り、その思いは八百年を超えて今日まで受け継がれてきた。 境内に足を踏み入れると、母を想う祈りの温かさが、時を越えて静かに胸に触れてくる。

    今回は、慈尊院を歩きながら、空海と母公の物語が宿るこの地に流れる祈りの記憶をたどってみたい。


    慈尊院

    慈尊院【じそんいん】は、和歌山県九度山町にある高野山真言宗の寺院である。

    816年に、弘法大師空海が高野山を開創する際に、高野山参詣の要所としてこの地に伽藍を創建したという。慈尊院は高野山の表玄関としての役割を果たし、高野山一山の庶務を司る政所【まんどころ】としての役割を担っていたという。

    空海の母、玉依御前【たまよりごぜん】は、讃岐国(現在の香川県)から高野山を訪れたが、当時の高野山は女人禁制であったため、慈尊院に滞在し、835年に亡くなったという。玉依御前は、生前、慈尊院の御本尊である弥勒菩薩を篤く信仰していたため、空海は母の霊を弥勒菩薩と共に祀ったという。

    慈尊院は、1474年に御廟を現在の場所に移している。また、1540年には紀ノ川の氾濫により大半の堂舎が流されたが、再建されている。その後も度重なる災害に見舞われたが、その都度、再建されてきた。

    慈尊院は、弘法大師空海の母親である玉依御前【たまよりごぜん】が滞在したことから「女人高野」として知られ、特に女性にとって重要な信仰の場となっていた。古来より信仰を集め、現在も多くの参拝者が訪れる寺院である。特に、女性の御利益を司る寺として親しまれているという。

    慈尊院の山号は万年山で、御本尊は弥勒菩薩(「慈尊」と呼ばれる)である。

    玉依御前は、生前、この御本尊の弥勒菩薩を篤く信仰していたという。この弥勒菩薩を祀っている弥勒堂(本堂)は、ユネスコの世界遺産『紀伊山地の霊場と参詣道』の一部として登録されている。

    慈尊院の境内には弘法大師堂があり、弘法大師空海が祀られている。

    多宝塔は、室町時代に建設が始まり、江戸時代に完成したという。多宝塔は、和歌山県指定の文化財である。

    築地塀【ついじべい】は、境内を囲む塀【へい】であり、和歌山県一の古さと壁の厚さを誇る。この築地塀も和歌山県指定の文化財である。

    慈尊院は、高野山の政所【まんどころ】として創建され、高野山への参詣道の一つである町石道【ちょういしみち】の登り口に位置している。つまり町石道の出発地点というわけである。

    境内は、国の史跡「高野参詣道」を構成する「町石道」の一部として指定されているほか、ユネスコの世界遺産『紀伊山地の霊場と参詣道』の一部として登録されている。

    慈尊院はその歴史的背景や文化財の数々から、多くの参拝者や観光客に愛されている。参拝する際には、これらの文化財を見学すると共に歴史的背景にも想いを寄せたい。

    名 称万年山慈尊院
    所在地和歌山県九度山町慈尊院832
    駐車場あり(無料)
    Link慈尊院 | 和歌山県

    あとがき

    慈尊院は、ユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産の一つとして登録されている。
    この寺院は、高野山への参詣道である町石道の起点に位置し、古くから多くの人々が祈りを胸に歩み始めた場所でもある。

    慈尊院は、弘法大師空海の母・玉依御前が高野山を訪れる際に滞在し、この地で亡くなった場所として知られている。生前、玉依御前は慈尊院の御本尊である弥勒菩薩を深く信仰していたため、空海は母の霊を弥勒菩薩とともに祀ったと伝えられている。こうした由来から、慈尊院は古くより「女人高野」と呼ばれてきた。また、境内の弥勒堂は重要文化財に指定されている。

    「女人高野」と聞けば、私はこれまで奈良県宇陀市の室生寺や、高野山の女人堂を思い浮かべるばかりであった。しかし、慈尊院もまた女性たちが祈りを捧げることのできる大切な場であったことを今回初めて知った。かつて高野山が女人禁制であった時代、慈尊院は女性が参拝できる貴重な寺院として、重要な役割を果たしていたのだろう。

    こうして慈尊院の由来にふれるたび、母を想う祈りの深さが、この小さな山麓の寺をいまも静かに支えているのだと感じさせられる。


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