はじめに
奈良県には１つの国立公園（吉野熊野）と４つの国定公園（室生赤目青山・金剛生駒紀泉・大和青垣・高野龍神）が設定されているが、奈良県も３つの県立自然公園を設定している。
本稿で取り上げたいのは、そのうちの一つである「県立吉野川津風呂自然公園」である。
県立吉野川津風呂自然公園の指定区域は、吉野川沿岸地帯と津風呂湖周辺地帯である。東西に約25kmと細長い自然公園である。
自然公園に指定した目的は、吉野川の清流を保護し、津風呂湖を含めた貴重な水辺の景観を保存し、水のある公園として積極的な利用を図るためであるという。奈良県には海がないので、淡水湖は海の代わりとして認識されているようだ。
＜目次＞
はじめに
吉野川
津風呂湖
あとがき
吉野川
吉野川【よしのがわ】は、一級河川・紀の川【きのかわ】の奈良県内での呼称である。
吉野川（紀の川）は、全国一位の多雨地帯である大台ヶ原を源流とし、奈良県内を流れるときは「吉野川」として紀伊山地を北西に向かって流れる。和歌山県に入ると名称を「紀の川」に変え、最終的には和歌山市で紀伊水道に注ぐ。
県立吉野川津風呂自然公園としての指定区域は、奈良県吉野町宮滝付近から奈良県五條市栄山寺付近に至るまでの吉野川沿岸地帯である。
| 名 称 | 吉野川 |
| 所在地 | 奈良県吉野町宮滝付近～ 奈良県五條市栄山寺付近 |
| Link | 吉野川(吉野町流域)｜奈良県観光[公式サイト] 吉野川（よしのがわ） | 吉野町公式ホームページ 吉野漁業協同組合 吉野川 鮎マップ |
津風呂湖
津風呂湖【つぶろこ】は、紀の川水系の一級河川・津風呂川【つぶろがわ】を津風呂ダムで堰き止めてできた人造湖（ダム湖）である。湖岸は美しいアカマツ林に包まれ、湖水と松林が調和した素晴らしい自然景観を呈している。
津風呂ダムは、堤高54.3mの重力式コンクリートダムで、利水専用の多目的ダムである
津風呂湖は、海のない奈良県内で初めて湖上遊覧船が就航した湖でもある。冬季（12月～翌年３月中旬）を除き、遊覧船による湖上一周ができる。湖の周辺は観光地として整備されている。
四季折々の風情も素晴らしい。特に、春は桜が咲き、新緑の季節を経て、秋には紅葉が美しいという。
津風呂湖は、関西では特に有名な釣りスポットでもある。特にヘラブナについては、関西におけるダム湖でのヘラブナ釣り発祥の地である。複雑な湖岸線は絶好の棲み処でもあり、ヘラブナの他にコイやブラックバスのスポットとして、休日には多くの釣り客が訪れる。津風呂湖ではボートでの釣りは行えるが、ダム堤体付近での釣りは厳禁となっている。
| 名 称 | 津風呂湖 |
| 所在地 | 奈良県吉野郡吉野町大字河原屋地先 |
| 駐車場 | あり（無料） |
| Link | 津風呂湖｜奈良県観光[公式サイト] 津風呂湖（つぶろこ） | 吉野町公式ホームページ 津風呂湖観光協会 – ダム湖とバス釣り、ワカサギ釣り 津風呂湖漁協 釣り場案内・遊漁規則 | つりチケ |
あとがき
吉野川【よしのがわ】と言えば、四国三郎【しこくさぶろう】の異名を持ち、「日本三大暴れ川」の一つに数えられる、高知県と徳島県を流れる一級河川を思い浮かべる人が大半であろう。
しかしながら、県立吉野川津風呂自然公園の指定区域になっている「吉野川」は、「紀の川」が奈良県内を流れるときの別称である。実は、そのことを知ったのは本稿を書いていてのことであるから、私も人のことが言えた義理ではない。
このような例は珍しいことではない。例えば、大阪湾に注ぐ一級河川の淀川【よどがわ】は、滋賀県にある琵琶湖から流れ出る際には「瀬田川」【せたがわ】と呼ばれ、京都府内を流れるときには「宇治川」【うじがわ】と呼ばれる。そして大阪府内を流れるときになってはじめて「淀川」と名前を変える。
その淀川水系の木津川の支流で三重県・奈良県・京都府の県境付近を流れる一級河川に「名張川」【なばりがわ】がある。この名張川も奈良県内を流れるときには「五月川」【さつきがわ】と呼ばれる。
このように河川名は、それぞれの地元における古来からの呼称で呼ばれることが多いようだ。奈良県内を流れる「吉野川」も全国的な桜の名所で名高い「吉野山」の近くを流れていることが河川名の由来だとされる。
本稿で取り上げた「津風呂湖」【つぶろこ】がある「津風呂川」【つぶろがわ】も「吉野川」に合流し、やがては「紀の川」と名を変えて紀伊水道に流れ込む。
このように河川に興味を持つことができたのは県立吉野川津風呂自然公園の存在を知ったおかげかも知れない。