◆ はじめに
秋が深まり、山々がゆっくりと色づき始める季節がやってきた。
今回は、三重県名張市にある香落渓【かおちだに】を起点に、奈良県との県境にそびえる小太郎岩、さらに奈良県曽爾村【そにむら】に位置する鎧岩や屏風岩といった、個性豊かな奇岩群をめぐる“秋の絶景ドライブ旅”を紹介したい。
渓谷美と奇岩、そして燃えるように色づく紅葉が織りなす景観は、まさに自然がつくり出したアートそのもの。車窓から眺める景色も、歩いて感じる澄んだ空気も、心を静かに潤してくれるに違いない。
香落渓
──断崖と紅葉が織りなす渓谷美
香落渓【かおちだに】は、名張川の支流である青蓮寺川に沿って、約8kmにわたって柱状節理の断崖が連なるダイナミックな渓谷である。
秋になると、モミジやカエデ、ナラなどが赤や黄色に染まり、岩肌とのコントラストが見事である!
柱状節理の断崖の間を縫うように紅葉が色づく様子は、まるで自然が描いた水墨画のようである。
車で走るだけでも次々と現れる絶景を十分楽しめるけれど、ところどころにある駐車スペースに車を停めて、渓流の音に耳を澄ませながら散策するのもおすすめである。
朝の光が差し込む時間帯は、紅葉がキラキラと鮮やかに輝いて幻想的である!
小太郎岩
──自然が生んだ巨岩のパワースポット
香落渓を抜けてさらに進むと現れるのが小太郎岩である。高さ約30メートルの巨岩で、まるで天に向かってそびえるような姿は圧巻である!紅葉に包まれたその姿は、まるで絵画にでもなるかのような壮大さで、自然の力強さを感じさせてくれる。
地元では古くから信仰の対象とされていて、巨岩のふもとには小さな祠もある。紅葉に包まれた小太郎岩は、静謐で神秘的な雰囲気に包まれていて、心がすっと落ち着く。静かな空気の中で、自然の力強さと神秘を感じられるパワースポットと言える。
鎧岩
──重なり合う岩肌が魅せる力強さ
さらに南へ進むと現れるのが鎧岩【よろいいわ】である。鎧岩は、曽爾村に位置する鎧岳【よろいだけ】の一部で、その名の通り、何枚もの鎧を重ねたようなゴツゴツとした岩肌が特徴で、見る者を圧倒する存在感である!
秋には、赤や黄色に染まった木々が岩の隙間から顔をのぞかせ、まるで自然が編み上げたモザイクアートのような美しさを見せてくれる。
屏風岩
──自然が創り出した巨大な屏風
最後に訪れたいのが屏風岩。曽爾村の兜岳【かぶとだけ】の西側に位置し、幅約2km・高さ約200mの柱状節理が屏風のようにそびえる壮大な岩壁で、屏風岩公苑として整備されている。
高さ200mにも及ぶ垂直の岩壁がまるで屏風のようにそびえ立ち、紅葉に彩られたその姿は、まさに天然の芸術作品と呼べるだろう。
岩のふもとには遊歩道も整備されており、間近でそのスケールを体感できるのが魅力となっている。岩肌に映る紅葉の影もまた、風情たっぷりである。
ドライブ旅の楽しみ方
紅葉のベストシーズンは、例年11月上旬から中旬にかけてである。ただ、近年は暖冬の影響もあり、紅葉の見頃が11月後半へとずれ込む傾向が見られるのが少し気がかりだ。
おすすめのルートは、名張市街から青蓮寺湖を経由して香落渓へ向かい、そのまま県道を南下して小太郎岩へ至るコースである。さらに足を延ばせば、道路脇から鎧岩や屏風岩を間近に眺めることができる。
つまり、 名張市街 ➡ 青蓮寺湖 ➡ 香落渓 ➡ 小太郎岩 ➡ 鎧岩 ➡ 屏風岩 という流れが、紅葉と奇岩を一度に楽しめるおすすめのドライブコースとなる。
途中、車道が狭くなる区間もあるため、対向車には十分注意しながら安全運転で楽しんでほしい。
時間に余裕があれば、青蓮寺湖や曽爾高原に立ち寄るのもよい。青蓮寺湖では湖畔の紅葉と静かな水面が美しく、心が穏やかに癒される。また、曽爾高原はススキの名所として知られ、秋の光に揺れる銀色の穂が見事である。
◆ あとがき
──秋の自然に癒され、心ほどける旅へ
香落渓と小太郎岩は、決して派手さこそないものの、静かで力強い美しさを湛えた場所である。ドライブで気軽にアクセスできるにもかかわらず、どこか秘境のような雰囲気が漂うのも、この地域ならではの魅力だろう。
紅葉の季節には、色づく山々と渓谷の景観に包まれながら、心をゆるめるドライブ旅に出かけてみてはいかがだろう。きっと、秋の一日が深く心に刻まれるはずである。
旅にゆとりがあれば、名張市の名勝・赤目四十八滝にも足を延ばしてみたい。滝めぐりの静かな時間は、また違った癒しを与えてくれるだろう。