投稿者: takaaki.nishioka

  • 神秘の森の巨人に会いに行く:全国の巨樹を巡る旅に出たい

    はじめに

    古来、人間は自然界のすべてのものに精神的な性質(魂、精霊、神のような超人的な何か)が宿ると考え、例えば、山や風や木や岩などにさえもその精神的な性質を宿ると信じてきた。

    それを専門用語では「アニミズムanimism) 」 と呼ぶのだそうだ。アニミズムは、すべてのものが精神的な性質(例えば、霊魂)を持つと信じるが、その前提になるのは個々の霊魂の独自性である。

    霊魂が宿る対象には、生物(例えば、高樹齢の樹木)と無機物(例えば、巨大な岩石)を問わない。

    神道は、このアニミズムと呼ばれる土着型の精霊、自然信仰が起源とされている。神話の登場などによって神様はさまざまな変遷を経て、今日の信仰に繋がっているのだという。

    ところで、神社仏閣の境内にある老齢の巨木は、そこに神が降臨すると信じられ、神聖視された「御神木」として注連縄【しめなわ】が張られ、崇められている。私は、最近、神社仏閣よりもこの御神木の方に興味を抱くことが増えてきたように思う。

    御神木の話は別稿に書いたので、本稿では神社の境内にある御神木ではなく、日本の神秘の森に生息している巨樹について書きたいと思う。

    目次
    はじめに
    神秘の森の巨人たち
    和池の大カツラ
    別宮の大カツラ
    みたらい渓谷の大カツラ
    岩座神のホソバタブ
    英彦山の鬼杉
    下城の大イチョウ
    宮園の大イチョウ
    会ってみたい全国の巨樹一覧
    あとがき

    和池の大カツラ

    私が老齢の巨木に興味をもつのは、御神木だけではない。老齢の巨樹に関心をもつきっかけになったのは「和池の大カツラ」を見てからだと思う。

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    兵庫県の天然記念物「和池の大カツラ」 (兵庫県香美町・但馬植物園内)

    「和池の大カツラ」は、但馬植物園内で生長しているカツラの巨樹で、兵庫県の天然記念物にも指定されている。樹齢1000年以上といわれ、幹回りは16m、 樹高は38mという、とんでもない巨大なカツラである。

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    和池の大カツラ」幹回り16m・樹高38mは確かに「半端ない」大きさだ!

    この巨大カツラの上手からは1日湧出量が約5,000トンといわれる水がこんこんと湧き出している。

    その渓流を跨いで、この巨大カツラ が成長していることにも驚かせられる。この神聖な景色は、何の疑念もなく精霊や神が宿っているのではないかと思わせるほどの雰囲気を与える。

    私はこの巨大カツラの前で言葉を発することができないほどの感動を覚えたことを今でも鮮明に記憶している。

    名 称和池の大カツラ
    所在地兵庫県香美町・
    「但馬植物園」内
    駐車場あり(無料)
    Link和池の大カツラ~香美町

    別宮の大カツラ

    兵庫県養父市別宮【べっくう】には「別宮の大カツラ」と呼ばれるカツラの巨樹があり、兵庫県指定の天然記念物になっている。

    幹回りの周囲は14m、樹高は27mである。枝張りは直径24mもあるという。

    このカツラの根元からは豊富な清水がこんこんと涌いており、下流に広がる多くの棚田を養っている。

    弘法大師・空海が諸国巡歴の途中にこの地に立ち寄り、教海寺を開いて別宮を発足させ、このカツラを水の神木であると告げたという伝承があるが、樹齢がおよそ400年と言われているので、この伝承とは矛盾する。

    別宮の大カツラの前に広がる別宮の棚田
    名 称別宮の大カツラ
    所在地兵庫県養父市別宮
    駐車場あり(無料)
    Link別宮の大カツラ | やぶ市

    みたらい渓谷の大カツラ

    みたらい渓谷は、奈良県吉野郡天川村にある渓谷で、近畿地方随一と称される紅葉の名所として知られている場所でもある。

    遊歩道も整備されており、ハイキングにはもってこいの場所である。その遊歩道の途中に道を遮るほどの大きさで姿を現すのが「みたらい渓谷の大カツラ」である。

    このカツラの巨樹は、大きすぎて全体を把握できない。根元から遊歩道を遮るように張り出した大きな枝が樹形をより複雑にしている。典型的な大カツラの姿の一つと言えなくもないが、この大カツラには自由奔放に生育する強い生命力を感じた。

    名 称みたらい渓谷の大カツラ
    所在地奈良県吉野郡天川村北角
    Link巨木 | 天川村(奈良県)
    みたらい渓谷 | 天川村

    岩座神のホソバタブ

    ホソバタブは、クスノキ科タブノキ属の常緑広葉樹で、アオガシという別名で呼ばれることもある。高木であり、樹高は通常10~15mになると言われている。

    このホソバタブの巨樹3本が、「岩座神の棚田」で有名な岩座神【いさりがみ】地区に鎮座する五霊神社のすぐ近くに生育している。これら3本のホソバタブの巨樹は、ホソバタブとしては兵庫県におけるトップ3の巨木であると言われている。樹高は約32 mに達するらしいので、通常よりも2~3倍も高く育っていることになる。

    名 称岩座神のホソバタブ
    所在地兵庫県多可町加美区岩座神
    Link岩座神のホソバタブ No1
    岩座神のホソバタブ No2

    英彦山の鬼杉

    英彦山【ひこさん】は、北岳・中岳・南岳の3つの峰からなり、最高点は南岳(標高1,199m)である。英彦山は古くから修験道の聖地であり、英彦山神宮が鎮座している。英彦山は、英彦山神宮の御神体になっている山である。

    英彦山鬼杉

    英彦山には現在も手付かずの自然林が残されている。その自然林のなかに「鬼杉」と呼ばれる、スギの巨樹が生育している。樹齢は1,200年以上とされ、福岡県最大級のスギの巨樹である。幹の周囲は約12.4m、高さは上部が落雷で欠損しているものの、約38mもあるという。

    名 称英彦山の鬼杉
    所在地福岡県添田町大字英彦山
    Link英彦山の鬼スギ | 添田町

    下城の大イチョウ

    熊本県阿蘇郡小国町下城坂下地内にある県下最大の銀杏の木は、「下城の大イチョウ」と呼ばれ、国の天然記念物に指定されている。幹まわり約12m、高さ約25mもある巨樹である。

    下城の大イチョウ」(熊本県阿蘇郡小国町下城)

    樹齢1000年以上と言われており、枝からは多数のこぶが下がっている。女性のお乳のように見えることから「ちちこぶ」さんとも呼ばれている。

    下城の大イチョウ」(樹齢は1000年以上)は国指定天然記念物である

    また、乳の出が少ない女性が、この大イチョウに乳の出が良くなるように祈ったところ、願いが叶ったという伝説もあるという。

    下城の大イチョウ」(幹まわり約12m、高さ約25m
    名 称下城の大イチョウ
    所在地熊本県小国町下城坂下
    駐車場あり(無料)
    Link下城大イチョウ |小国町

    宮園の大イチョウ

    宮園の大イチョウ」は、樹齢500年の雄株で、熊本県下での最大級の古木であると言われている。熊本県指定の天然記念物でもある。

    宮園の大イチョウ」(幹まわり約8.3m、根回り約14m、高さ約45m

    私たちは熊本県内を旅していた際に、偶然「宮園のイチョウ」の案内板を道路脇で見つけて寄り道をした。見応えのある大銀杏である。「下城の大イチョウ」より幹回りは細いが、樹高はこちらの大イチョウの方がはるかに高そうである。ちょうど黄色に色づいており、しかも落ち葉が黄色のままで美しかった。

    宮園の大イチョウ
    宮園の大イチョウ

    私は、関係者ではなく、通りすがりの旅人ではあったが、この大銀杏が大切に維持管理されているようでちょっと嬉しかった。

    名 称宮園の大イチョウ
    所在地熊本県五木村甲5662
    駐車場あり(無料)
    Link宮園の大イチョウ | 五木村

    神秘の森の巨人たち

    「和池の大カツラ」のような巨樹が全国各地にあると聞く。生きているうちに彼ら「森の巨人たち」に会いにいきたいものだ。


    会ってみたい全国の巨樹一覧

    名称         種類  樹齢所在地
    森の神様カツラ900+美瑛町
    めおと杉スギ200~300秋田市
    オブ山の大杉スギ1000+大仙市
    法内の八本杉スギ300+由利本荘市
    女甑山の大カツラカツラ不明真室川町
    滝の沢の一本杉スギ300+真室川町
    岩神権現のクロベネズコ200~300大蔵村
    和賀仙人姥スギスギ900+北上市
    越代の桜サクラ400古殿町
    コモチカツラカツラ1000+白山市
    岩谷のトチノキトチノキ400南越前町
    大又のカツラカツラ300熊野市
    大悲山の三本杉スギ1200京都市
    和池の大カツラカツラ1000+香美町
    鬼杉スギ1200+添田町
    エドヒガンザクラサクラ600伊佐市
    下城の大イチョウイチョウ1000+小国町
    縄文杉スギ2000~7200
    計測:2170
    屋久島町
    一度は見てみたい全国の巨樹一覧
    参考:「森の巨人たち百選(林野庁)」
    樹齢単位:年

    あとがき

    林野庁は、後世への財産として健全な姿で残していくべき巨樹を調べ、その代表的な巨樹を「森の巨人たち百選」として選定した上で、各自治体やボランティア団体と協働して巨樹の保護活動を実施することに尽力しているという。

    これら「森の巨人たち」が私たちの何代も後の世代においても元気な姿でいてもらいたいと思う。そのためには人災による周辺森林環境の破壊だけは避けなければならないと思う。同時に台風や地震などの天災による被害も受けないように願いたい。


    【参考資料】
    和池の大カツラ~香美町
    別宮の大カツラ | やぶ市観光協会
    岩座神のホソバタブ No1 | 巨樹
    岩座神のホソバタブ No2 | 巨樹
    巨木 | 天川村公式サイト(奈良県)
    みたらい渓谷 | 天川村(奈良県) 
    英彦山の鬼スギ | 添田町
    下城大イチョウ – 自然|小国町
    宮園の大イチョウ | 五木村観光情報
    森の巨人たち百選:林野庁
    美瑛の森の神様カツラ:北海道
    東北森林管理局/めおと杉
    東北森林管理局/オブ山の大杉
    東北森林管理局/法内の八本杉
    東北森林管理局/女甑の大カツラ
    東北森林管理局/滝の沢の一本杉
    東北森林管理局/岩神権現のクロベ
    和賀仙人姥スギ:東北森林管理局
    越代の桜《古殿町》いわき市観光
    白山市 市ノ瀬のコモチカツラ
    28kaga.pdf(国有林野の維持及び保存;希少樹木の保存)
    森林への誘い~福井森林管理署
    三重県の樹木百選 / 大又のカツラ
    大悲山の三本杉:近畿中国森林管理局
    鹿児島県/日本一のエドヒガンザクラ
    屋久杉巨樹 | 屋久島町屋久杉自然館