| <目次> はじめ 伊勢志摩国立公園の魅力 伊勢神宮を歩く 志摩へ向かう 二見浦・夫婦岩 鳥羽展望台 日和山展望台 リアス海岸を歩く 横山展望台 西山慕情ヶ丘 登茂山展望台 桐垣展望台 英虞湾と賢島 志摩の文化と自然にふれる 御座白浜 国府白浜(国府の浜) あとがき |
◆ はじめに
伊勢志摩国立公園は、三重県志摩半島一帯からなる国立公園である。英虞湾【あごわん】、的矢湾【まとやわん】、五ヶ所湾【ごかしょわん】など深い入り江が多く、リアス式海岸と温暖な気候による植生が特徴的である。伊勢志摩国立公園内には伊勢神宮(正式には「神宮」)が鎮座する。
伊勢神宮の森に足を踏み入れると、空気がふっと変わる。 大きな木々が静かに立ち並び、風が枝葉を揺らす音だけが聞こえてくる。 この深い静けさは、訪れるたびに心を整えてくれる。
森を抜けて志摩へ向かうと、風景は一変する。 リアス海岸の複雑な入り江が青く輝き、 海と空がゆっくりと溶け合うように広がっている。 同じ国立公園の中に、これほど異なる表情が共存していることに驚かされる。
本稿では、伊勢神宮の森と志摩の海を歩きながら、 伊勢志摩国立公園が描く静かな旅を、シニアの視点でゆっくり味わっていきたい。
伊勢志摩国立公園の魅力
──森と海が共存する風景
伊勢志摩国立公園は、伊勢神宮の深い森と、志摩のリアス海岸が同じ公園内に共存する、 日本でも珍しい国立公園だ。 森の静けさと海の広がり──この対比が、旅に豊かな奥行きを与えてくれる。
伊勢神宮の森は、古代から守られてきた神域であり、 木々の一本一本に歴史が宿っているような気配がある。一方、志摩の海は、黒潮の影響を受けて透明度が高く、 複雑な入り江が美しい曲線を描いている。
歩く旅では、この「森から海へ」という風景の変化を、 自分の足でゆっくり味わうことができる。
伊勢神宮を歩く
──森が整える心
伊勢神宮の森は、歩くほどに心が静まっていく場所だ。 内宮の参道は大きな木々が立ち並び、 木漏れ日が揺れながら落ちてくる。 五十鈴川の清らかな流れは、 古くから人々の心を洗い清めてきた。

外宮の森は、内宮よりも落ち着いた雰囲気があり、 歩く速度に合わせて静けさが深まっていく。 神宮の建物は派手さがなく、 自然と調和するように佇んでいる。

森の中を歩いていると、 自分の呼吸が自然のリズムに重なっていくような感覚がある。 伊勢神宮は、歩く旅の「始まりの場所」としてふさわしい。
志摩へ向かう
──風景が森から海へ変わる道
伊勢から志摩へ向かう道は、 森から里山、そして海へと風景がゆっくり変わっていく。車で移動するだけでは気づかない変化も、 歩く旅では自然に感じられる。

里山の風景は穏やかで、 田畑や集落が静かに広がっている。やがて道の向こうに海の青が見え始めると、旅が次の章へ進んだことを感じる。森から海へ── この移り変わりが、伊勢志摩の旅の大きな魅力だ。
● 二見浦・夫婦岩
二見浦【ふたみがうら】は、伊勢市二見町の今一色から立石崎に至る海岸である。かつて神宮参拝の禊場であった場所である。

二見浦・立石崎にある夫婦岩は有名で、撮影スポットにもなっている。
| 名 称 | 二見浦・夫婦岩 |
| 所在地 | 三重県伊勢市二見町江 二見興玉神社内 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 夫婦岩 | 観光三重 |
● 鳥羽展望台
鳥羽展望台は、箱田山の山頂にある展望台で、パールロード随一の眺望と言われている。但し、眺望は天候次第である。
パールロードとは、三重県の鳥羽市から志摩市までを結ぶ県道である。正式名称は三重県道128号鳥羽阿児線である。かつては有料道路であったが、現在は無料化されている。

鳥羽展望台からは太平洋が一望でき、渥美半島、神島、安乗岬や大王崎が展望できる。元旦には太平洋の水平線から登る初日の出を見に来る客で賑わう。
| 名 称 | 鳥羽展望台 |
| 所在地 | 鳥羽市国崎町字大岳3-3 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 鳥羽展望台 海女のテラス |
● 日和山展望台
日和山【ひよりやま】展望台は、日和山の山頂にある展望台である。展望台からは鳥羽港(鳥羽湾)を一望することができる。
日和山は、鳥羽駅・鳥羽港の西に位置しする、鳥羽三山の一つの山である。山名の由来は、船頭が天候を日和見するために登ったことから名付けられたという。山頂には日和山展望台、日和山方位石、幸せの鐘や無線電話発祥記念碑がある。
| 名 称 | 日和山展望台 |
| 所在地 | 鳥羽市鳥羽2丁目 |
| 駐車場 | 鳥羽駅西駐車場(2時間以内無料) |
| Link | 日和山 | 観光三重 |
リアス海岸を歩く
──海と入り江が描く複雑な美
志摩のリアス海岸は、 複雑な入り江が連なり、海が深く入り込んでいる。 英虞湾はその代表的な風景で、穏やかな海面が静かに広がっている。リアス海岸は、海の「静」と「動」が同時に感じられる場所だ。
展望台に立つと、 海と入り江が織りなす曲線が美しく、 まるで絵画のような風景が広がる。 歩いて海岸線に近づくと、 潮風が頬をかすめ、 海の香りが静かに漂ってくる。
● 横山展望台
横山展望台は、志摩半島南部に位置する横山(標高203m)に設置されている展望台である。横山展望台には、横山天空カフェテラス、木漏れ日テラス、そよ風テラス、あご湾展望台、みはらし展望台などと呼ばれる複数の展望台が設置されており、英虞湾の眺望を楽しめるようになっている。
沖合から横山を眺めると横長に見えることが山名の由来とされる。登山口には「横山ビジターセンター」(環境庁)が設置され、横山だけではなく、伊勢志摩国立公園全体の情報提供が行なわれる拠点になっている。
英虞湾のリアス式海岸や大小の島々、それに英虞湾に浮かぶ無数の真珠養殖筏を眺望することができるほか、展望台からの夕日の眺めが素晴らしいとされている。したがって、横山展望台を英虞湾観光から外すことはできない。
| 名 称 | 横山展望台 |
| 所在地 | 志摩市阿児町鵜方875-20 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 横山展望台 | 伊勢志摩観光 |
● 西山慕情ヶ丘
西山慕情ヶ丘は、英虞湾を北東から眺望できる展望台で、夕陽が美しい場所としても知られている。
| 名 称 | 西山慕情ヶ丘 |
| 所在地 | 志摩市阿児町立神 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 西山慕情ヶ丘 | 伊勢志摩観光 西山慕情ヶ丘 | 志摩市観光 |
● 登茂山展望台
登茂山【ともやま】展望台は、登茂山(標高48m)にある展望台である。登茂山は、山というより緩やかな丘陵で、山頂部は広場になっている。登茂山展望台からは英虞湾を東北東から眺めることができる。
志摩市ともやま公園として整備されており、園内には様々なスポーツ施設や屋内外での自然体験活動拠点が設けられている。
| 名 称 | 登茂山展望台 |
| 所在地 | 志摩市大王町登茂山 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 登茂山展望台 慕情が丘展望台 |
● 桐垣展望台
桐垣展望台【きりがきてんぼうだい】は、英虞湾に面した展望台で、英虞湾を東側から展望することができる。西向きであるところから夕陽の名所とされる。
| 名 称 | 桐垣展望台 |
| 所在地 | 志摩市大王町波切2199 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 桐垣展望台 ともやま公園内 |
英虞湾と賢島
英虞湾【あごわん】は、志摩半島南部にある湾で、リアス式海岸としても有名であり、伊勢志摩国立公園の中心である。湾内の深さは約20m前後で、最深部でも40m程度であるという。英虞湾は地殻変動によって形成された「溺れ谷」【おぼれだに】であるようだ。湾口には御座岬【ござみさき】がある。
湾内には大小60の島が浮かび、独特の景観を創り出している。有人島としては、賢島、間崎島、横山島などがあるが、大半は無人島である。有名な無人島としては、天童島、土井ケ原島、多徳島などが挙げられる。
真珠の養殖が盛んで奈良時代から阿古屋貝【アコヤガイ】から採れる真珠を出荷していたという。明治時代半ばに阿古屋貝による真円真珠の養殖技術が確立されると、真珠養殖発祥の地としても知られるようになった。
真珠の養殖以外にも青のりの養殖が盛んで、晩秋から春にかけて海苔網が多く建つという。
また、英虞湾にはウミホタル(甲殻類の一種)も生育しているので晴れの日が数日間も続いた場合には海が緑色に輝くこともあるという。
賢島【かしこじま】は、英虞湾内にある有人島で、湾内の島では最大面積を有する島で、奥志摩観光の拠点となっている。
近鉄志摩線の終着駅である賢島駅が島の中央部に位置する。賢島港も整備されている。島内には志摩観光ホテルや賢島宝生苑などのホテルや旅館の他、保養施設やレジャー施設がある。
| 名 称 | 賢島 |
| 所在地 | 志摩市阿児町神明747-17(賢島駅) |
| Link | 賢島 | 伊勢志摩観光ナビ |
志摩の文化と自然にふれる
志摩は、海女文化や真珠養殖の歴史が息づく地域だ。 海と人の暮らしが深く結びついており、 海女小屋や真珠の養殖筏が、海の風景に静かに溶け込んでいる。
歩く旅では、こうした文化の気配を自然に感じられる。 海岸線の小さな集落は素朴で、 海とともに生きる人々の暮らしが静かに続いている。
志摩の海は、ただ美しいだけではなく、 人の営みが重なった「生活の海」でもある。
● 御座白浜
御座白浜【ござしらはま】は、志摩半島先端に位置する海水浴場である。水質が良いこと(最高ランクの「AA」)で知られ、白い砂浜が特徴的な海水浴場であるため人気も高い。


| 名 称 | 御座白浜 |
| 所在地 | 三重県志摩市志摩町御座 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 御座白浜海水浴場 |
● 国府白浜(国府の浜)
国府白浜【こうしらはま】は、三重県志摩市阿児町国府にある海浜で、通称として「国府の浜」と呼ばれる。かつて志摩国の国府及び国分寺がおかれた地であり、それが地名となっている。
太平洋に面した遠浅の海岸で、浜長は約3kmにも及ぶ。砂浜の砂は粒度が細かいことで知られる。浜の頂上にはクロマツの松林(防風林・防砂林)が連なる。
| 名 称 | 国府白浜(国府の浜) |
| 所在地 | 三重県志摩市阿児町国府 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| Link | 国府の白浜(国府白浜) |
◆ あとがき
伊勢神宮の森の静けさと、 志摩の海の広がり── この二つが一つの旅の中で自然につながることが、 伊勢志摩国立公園の魅力の深さだ。歩くほどに自然との距離が近づき、 心がゆっくり整っていく。
三重県志摩半島一帯が指定区域になっている伊勢志摩国立公園は非常に魅力的な国立公園であるにも関わらず、私は今まで自然公園として全く認識せずに旅行していたことに気付いた。
自分ではそれほど時間が経ているとは気づいていなかったが、このエリアへの旅行は私の娘たちがまだ幼い頃であり、子どもたちを楽しませるためが主目的であった。そして、私自身にも自然と向き合う余裕がなかったのかも知れない。
伊勢志摩を歩く旅は、 森と海が描く静かな風景をゆっくり味わう時間だ。伊勢神宮の森は心を整え、 志摩の海はその心を静かに広げてくれる。 人生の歩みを重ねた今、 この対比は若い頃とは違う深さで響いてくる。
次にこの地を訪れるとき、 また新しい表情の森と海に出会えるだろう。 その静かな変化を楽しみにしている。