◆ はじめに
秋が深まる頃、伊賀の里山にひっそりと佇む射手神社【いてじんじゃ】の境内は、まばゆい黄金色に染まる大イチョウによって静かに輝きを放つ。
今回は、その知る人ぞ知る大イチョウを訪ね、伊賀の秋をゆっくり味わってきた。そのひとときを記録として綴りたい。
射手神社

三重県伊賀市にある射手神社【いてじんじゃ】は、地域の人々に古くから親しまれてきた小さな神社である。主祭神として応神天皇【おうじんてんのう】を祀り、さらに配祀神として以下の多くの神々が祀られている。
- 玉垂命【たまたれのみこと】
- 八神靈【やがみのたま】
- 伊邪那岐命【いざなぎのみこと】
- 宇迦能御魂神【うかのみたまのかみ】
- 菅原道真【すがわらのみちざね】
- 大山祇神【おおやまつみのかみ】
- 彌都波能賣神【みづはのめのかみ】
- 建比良鳥命【たけひらとりのみこと】
- 建速須佐之男命【たけはやすさのおのみこと】
- 五男三女神【ごなんさんじょしん】
- 仁徳天皇【にんとくてんのう】
- 八衢比古神【やちまたひこのかみ】
- 火産靈神【ほむすびのかみ】

源義経が戦勝祈願に訪れたという伝承や、西行法師の和歌が残るなど、歴史と文化の香りが漂う神社でもある。

春は桜、秋は大イチョウの黄葉が美しいことで知られ、地元の人々にとっては勝運の神として親しまれている。華やかさこそないが、どこか懐かしく、心がほっと和らぐような空気が境内に満ちている。

参道の石段の登り口右手には、堂々とした大イチョウがそびえている。長い年月を経て育ったその姿は、まさに御神木と呼ぶにふさわしい風格である。
秋になると無数の葉が黄金色に染まり、神社全体をやわらかく包み込むという。

私が訪れたのは11月23日(勤労感謝の日)であったため、残念ながら目にしたのは黄金色に輝く姿ではなく、すでに落葉を終えた後の大イチョウであった。もう少し早く訪れればよかったと悔やまれたが、それもまた自然の巡り合わせである。
来年こそは、陽光を浴びて輝く黄金色の大イチョウをぜひ鑑賞したいと思う。
| 名 称 | 射手神社 |
| 所在地 | 三重県伊賀市長田2691-1 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| アクセス | 伊賀市駅から車で15~20分 |
| Link | 伊賀市観光 | 射手神社 |
◆ あとがき
射手神社の大イチョウは、観光地として広く知られているわけではない。しかし、だからこそ静かに秋を味わいたい人に訪れてほしい場所である。自然と歴史が溶け合うこの神社で過ごすひとときは、心の奥にそっと灯がともるような、やさしい時間となる。
伊賀の国の秋を探す旅で射手神社を訪れた後は、近くにある「芭蕉の森公園」にも足を延ばすとよい。芭蕉の句碑が点在し、モミジの紅葉とともに俳句の世界を楽しむことができる。