はじめに
日本アルプスは、中部地方の3つの山脈(飛騨山脈・木曽山脈・赤石山脈)の総称であるが、各山脈はそれぞれ北アルプス・中央アルプス・南アルプスと呼ばれることが多くなっている。
中部山岳【ちゅうぶさんがく】国立公園は、長野、岐阜、富山、新潟の4県にまたがる飛騨山脈(北アルプス)を中心とした国立公園である。
中部山岳国立公園の指定区域には槍が岳、穂高岳や立山などの標高3,000m級の山岳や、上高地や乗鞍高原などの高原だけでなく、天然湖沼やダム湖、滝の名所が目白押しである。
中部山岳国立公園の指定区域である山岳エリアへは登山が必要になるが、高原エリアへは比較的容易にアクセスできる。それら高原の観光地の周辺には秘湯的な温泉地が多いのも魅力的である。
但し、高原エリアといっても雲ノ平と高天原は別で、この両者は登山対象である。秘湯中の秘湯である高天原温泉(高天原)には登山をしないと行くことができない。それも北アルプスの魅力の一つであるが、本稿では中部山岳国立公園の指定区域のうち、比較的アクセスが容易な場所について記述したいと思う。
<目次>
はじめに
北アルプスの主な高原
- 栂池高原
- 上高地
- 乗鞍高原
- 弥陀ヶ原
- 高天原
- 雲ノ平
北アルプスの主なダム湖
- 黒部湖
- 有峰湖
- 高瀬ダム調整湖
- 七倉ダム湖
北アルプスの主な滝
- 称名滝
- 折尾ノ大滝
- 平湯大滝
- 三本滝
- 善五郎の滝
- 番所大滝
北アルプスの温泉郷
- 蓮華温泉
- 白馬鑓温泉
- 鐘釣温泉
- 祖母谷温泉
- 名剣温泉
- 阿曽原温泉
- 地獄谷温泉
- 高天原温泉
- 湯俣温泉
- 上高地温泉
- 中の湯温泉
- 坂巻温泉
- 乗鞍高原温泉
- 白骨温泉
- 平湯温泉
- 福地温泉
- 新穂高温泉
あとがき
北アルプスの高原一覧
高原名 | 標高(m) | 所在地 |
---|---|---|
栂池高原 | 800~2,000 | 長野県北安曇郡小谷村 |
上高地 | 約1,500 | 長野県松本市安曇 (上高地) |
乗鞍高原 | 約1100~1800 | 長野県松本市安曇 |
弥陀ヶ原 | 1,600~2,000 | 富山県中新川郡立山町芦峅寺 |
高天原 | 約1,900 | 富山県富山市有峰黒部谷割 |
雲ノ平 | 2,500~2,700 | 富山県富山市有峰 |
栂池高原
栂池高原【つがいけこうげん】(標高800~2,000m)は、白馬岳【しろうまだけ】の東麓に広がる高原である。高原上部には栂池自然園があり、ふもとには栂池高原スキー場や白馬乗鞍温泉スキー場がある。
名 称 | 栂池高原【つがいけこうげん】 |
所在地 | 長野県北安曇郡小谷村栂池高原 |
Link | 白馬つがいけ高原スキー場 |
上高地
上高地【かみこうち】(標高約1,500m)は、梓川上流に位置する堆積平野で、大正池から横尾までの約10kmの平坦地を指す。梓川に架かる河童橋は、上高地のシンボルとなっている。
上高地は、温泉もある景勝地で、穂高連峰や槍ヶ岳への登山基地にもなっている。
私は穂高岳への登山のために上高地に何度が足を運んでいるが、上高地をゆっくりと散策した経験がない。今度は上高地で滞在して、ゆっくりと散策してみたいものだ。
名 称 | 上高地【かみこうち】 |
所在地 | 長野県松本市安曇 (上高地) |
Link | 上高地公式ウェブサイト |
乗鞍高原
乗鞍高原【のりくらこうげん】(標高約1,100~1,800m)は、乗鞍岳から東麓に流出した溶岩によって形成された東西に細長い山麓高原である。
乗鞍高原は乗鞍岳の麓にあるが、どこからでも乗鞍岳が見えるわけではない。乗鞍岳の姿を求めて広い乗鞍高原を散策することになる。しかし、それも楽しいものである。乗鞍岳は見る方角によってその姿を変えるからである。
乗鞍高原へは夏から秋にかけては避暑や登山が目的で多くの観光客や登山者が訪れる。また、冬はスキー目的のスキーヤーが多く訪れる。複数の温泉が湧出しているので、温泉も楽しむである。
乗鞍高原には「風蓮洞」と呼ばれる大学の宿泊施設があった。ワンゲル部に所属していたので、夏は小屋番として滞在したり、冬は冬山登山のトレーニングとして「雪上訓練」のために乗鞍高原には訪れたことがある。私にとっては想い出深い「青春時代」を過ごした場所でもある。娘たちが幼い頃に初めて登山に連れて来たのも乗鞍高原であり、乗鞍岳であった。
名 称 | 乗鞍高原【のりくらこうげん】 |
所在地 | 長野県松本市安曇 |
Link | 乗鞍高原 – のりくら観光協会公式サイト |
弥陀ヶ原
弥陀ヶ原【みだがはら】(標高1,600~2,000m)は、立山連峰の麓に広がる、東西4km、南北2kmの高原である。火砕流台地であるが、河川による浸食で現在のような東西に長細い形状となったとされる。
高原を立山黒部アルペンルートの立山有料道路が通っている。
名 称 | 弥陀ヶ原【みだがはら】 |
所在地 | 富山県中新川郡立山町芦峅寺【あしくらじ】弥陀ヶ原 |
Link | 弥陀ケ原/富山県の観光/旅行サイト「とやま観光ナビ」 |
高天原
高天原【たかまがはら】は、北アルプスの水晶岳西麓にある湿原である。「日本一遠い温泉」と称される高天原温泉が湧いている場所でもあるほか、「日本最後の秘境」と称される雲ノ平とも隣接している。
高天原は、水晶岳の西斜面が地滑りによって形成された緩斜面や窪地が湿地になったと考えられている。湿地内には多くの池塘が存在する。
雲ノ平に行く途中で、高天原温泉で登山の疲れと汗を洗い流したつもりが、雲ノ平山荘に到着するまでに再び汗をかいたことを想い出す。
名 称 | 高天原【たかまがはら】 |
所在地 | 富山県富山市有峰黒部谷割 |
Link | 高天原山荘|ロッジ太郎 |
雲ノ平
雲ノ平【くものたいら】(標高2,500~2,700m)は、黒部川源流部に位置する、祖父岳火山(標高2,825m) によって形成されたなだらかな溶岩台地である。池塘と岩が点在する高原で、高山植物の宝庫でもある。
雲ノ平には次のような名称で呼ばれる、8つの高山植物群落地がある。
- 日本庭園
- スイス庭園
- ギリシャ庭園
- 奥スイス庭園
- アルプス庭園
- 奥日本庭園
- アラスカ庭園
- 祖父庭園
日本庭園は、祖父岳の南山腹の第1雪田と第2雪田の間にある高山植物の群落地である。スイス庭園は、間近に水晶岳が望めるキャンプ指定地のすぐ北側にあり、木道が設置され周囲に池塘と岩が点在する。ギリシャ庭園は 雲ノ平山荘周辺にあり、奥スイス庭園はコロナ観測所の北側にある。アルプス庭園は祖母岳山頂部にあり、雲ノ平山荘からの木道がある。奥日本庭園は、祖父岳の北側の薬師沢方面の登山道上で、ハイマツ帯に池塘が点在する。アラスカ庭園は西端のシラビソ林であり、祖父庭園は祖父岳の北西の登山道分岐点で溶岩が多い場所である。
雲ノ平は、北アルプスの最深部に位置するため、どの登山口からでも当日中にたどり着くことが困難であり、日本最後の秘境と呼ばれる。
私は一度だけ友人と雲ノ平に行き、雲ノ平山荘で宿泊させてもらった経験がある。苦労して行った甲斐があったことを今も覚えている。体力が残っているうちに再訪しておくべきであった。今の私の体力では雲ノ平への登山は無謀かも知れない。
名 称 | 雲ノ平【くものたいら】 |
所在地 | 富山県富山市有峰 |
Link | 雲ノ平について | 雲ノ平山荘 |
北アルプスのダム湖一覧
ダム湖名 | 河川名 | 特記事項 |
---|---|---|
黒部湖 | 黒部川 | 日本第一位の堤高(186m) |
有峰湖 | 和田川 | 黒部湖よりも大きな巨大人造湖 |
高瀬ダム調整湖 | 高瀬川 | 日本第二位の堤高(176m) |
七倉ダム湖 | 高瀬川 | 日本有数の堤高(125m) |
黒部湖
黒部湖【くろべこ】(標高1,454m)は、北アルプスの立山連峰と後立山連峰に挟まれた黒部渓谷に位置するため自然の景観が非常に良い。周辺が中部山岳国立公園でもあることから、立山黒部アルペンルートのハイライトの一つとして多くの観光客が訪れる観光名所となっている。
黒部川を堰き止める黒部ダムの堤高は、186mで、幅(堤頂長)は492mもある。日本で最も堤高の高いダムとして知られる。人造湖とは言え、コンクリートの堰を見ない限りはそれとは気づかない素晴らしい景観を楽しめることができる。
もちろんコンクリートの堰もそれはそれで圧巻である。私は高い所が苦手なので、その場に長居をしたくないという個人的理由があるだけだ。
黒部湖には観光で訪れたが、この黒部ダムの建設に尽力した人々への感謝と黒部ダムの電力供給への貢献の大きさも忘れないようにしたいものである。
名 称 | 黒部湖【くろべこ】 |
所在地 | 富山県立山町 |
Link | 黒部ダムオフィシャルサイト (kurobe-dam.com) |
有峰湖
有峰湖【ありみねこ】(標高1089m)は、常願寺川水系の一つである、立山連峰の薬師岳(標高2,926m)の麓を流れる険しいV字谷の和田川を有峰ダムで堰き止めた巨大な人造湖である。
有峰ダム湖(有峰湖)の総貯水容量は2億2,200万立方メートルで、山を隔てて東側に隣接する黒部ダム湖(黒部湖)よりも10%ほど大きいという。巨大な人造湖で間違いはなさそうだ。
有峰湖には宝来島と呼ばれる島が浮かび、そこには北陸電力が有峰ダムの完成を記念して建立した有峰神社が祀られている。湖の水位が下がると陸続きになるが、急斜面のため容易には近づけないということである。
名 称 | 有峰湖【ありみねこ】 |
所在地 | 富山県富山市有峰 |
Link | 富山県/有峰湖 有峰湖展望台 | 富山市の観光公式サイト | 富山市観光協会 |
高瀬ダム調整湖
高瀬ダム調整湖【たかせダムちょうせいこ】は、信濃川水系の高瀬川の上流部に建設された高瀬ダムによって堰き止められた人造湖である。
高瀬ダムは、黒部ダムに次いで2番目に高い堤高(176m)を誇る巨大なロックフィルダムである。この人造湖には愛称や通称がなく、高瀬ダム調整湖と呼ばれる。
名 称 | 高瀬ダム調整湖 |
所在地 | 長野県大町市 |
Link | 高瀬ダム(長野県大町) – 水辺遍路 高瀬ダム・七倉ダム – 資源ドットネット SHIGEN.NE |
七倉ダム湖
七倉ダム湖(ななくらダムこ)は、信濃川水系の高瀬川の上流域に建設された七倉ダムによって堰き止められた人造湖である。
七倉ダムは、高瀬ダムのすぐ下流に位置し、同じくロックフィルダムである。 七倉ダムも堤高が125mもあり、日本有数の高さを誇っている。
名 称 | 七倉ダム湖 |
所在地 | 長野県大町市平高瀬入地先 |
Link | 七倉ダム | 大町市観光協会 高瀬ダム・七倉ダム – 資源ドットネット SHIGEN.NET |
北アルプスの主な滝
滝 名 | 落差(m) | 幅(m) |
---|---|---|
称名滝【しょうみょうだき】 | 350 | – |
折尾ノ大滝【おりおのおおたき】 | 40 | – |
平湯大滝【ひらゆおおたき】 | 64 | 6 |
三本滝【さんぼんだき】 | 50 | – |
善五郎の滝【ぜんごろうのたき】 | 21.5 | 8 |
番所大滝【ばんどころおおたき】 | 40 | 15 |
称名滝
称名滝【しょうみょうだき】は、称名川【しょうみょうがわ】流域の「称名廊下」と呼ばれる大峡谷の下流に位置する滝で、落差が350mもあり、名実ともに「日本一の名瀑」である。
立山室堂に向かうバスから垣間見えた称名滝を間近で見たくなり、妻と行ってきた。滝は4段に分かれ、一番下流の滝の落差は126mだということだ。感動ものである。
称名滝の近くには、実はハンノキ滝と呼ばれる「幻の滝」があるという。残雪期や大雨の時にだけ現われるため「幻の滝」と呼ばれている。通年存在していないため、公式には落差日本一の座は称名滝(350m)であるものの、出現している間は落差500mの巨瀑に変貌するという。その出現時は日本一で間違いない。
名 称 | 称名滝 |
所在地 | 富山県中新川郡立山町芦峅寺 |
Link | 称名滝 |【公式】富山県の観光「とやま観光ナビ」 |
折尾ノ大滝
折尾ノ大滝【おりおのおおたき】は、黒部川に流れ込むオリオ谷に位置する、落差40mの滝である。
大太鼓からは「水平歩道」と呼ばれるほぼ水平で歩きやすいが危険な登山道が続く。その登山道を1時間ほど歩くと到着するのは「折尾ノ大滝」と呼ばれる滝である。
緊張感の続く登山道「水平歩道」の中で「折尾ノ大滝」はオアシス的なスポットであり、ここで休憩を取る登山者は多い。ここで水の補給ができるのも有難い。
阿曽原温泉小屋【あぞはらおんせんこや】(後述)は、折尾ノ大滝から比較的近い位置にあるので、時間に余裕があれば、汗を流すのにちょうど良い。
名 称 | 折尾ノ大滝 |
所在地 | 富山県黒部市宇奈月町 |
Link | 黒部峡谷 折尾ノ大滝 折尾谷 下ノ廊下 水平歩道 Kurobe Gorge Toyama pref. Japan – YouTube |
平湯大滝
平湯大滝【ひらゆおおたき】は、神通川支流の高原川の上流、大滝川にある滝で、落差64m、幅約6mの名瀑である。紅葉の名所としても知られている。
冬季の厳冬期には氷結して氷瀑となり、毎年2月には氷瀑がライトアップされて、「平湯大滝結氷まつり」が開催されている。
戦国時代、武田信玄の家臣であった山県昌景が飛騨攻めの最中、峠超えの疲労と硫黄岳の毒ガスによって疲弊し、平湯大滝付近で動けなくなってしまった時に、一匹の白猿によって教えられた温泉につかって疲労を回復したという伝説が残されている。その温泉こそが平湯温泉であるという。
名 称 | 平湯大滝【ひらゆおおたき】 |
所在地 | 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯 |
Link | 平湯大滝 | 飛騨高山観光公式サイト |
三本滝
三本滝【さんぼんだき】は、乗鞍岳の麓、乗鞍高原の最上部に位置し、小大野川【こおおのがわ】・黒い沢・無名沢の3本の河川の合流地点の直近にあり、3本の滝が横に並んでいることから「三本滝」と呼ばれる。梓川支流の小大野川によってできた滝の落差は50mもある。
三本滝は、乗鞍高原にある善五郎の滝や番所大滝と共に「乗鞍三滝」と称されることがある。
名 称 | 三本滝【さんぼんだき】 |
所在地 | 長野県松本市安曇地区 |
Link | 三本滝|松本市安曇 | 長野県の情報【E-CURE】 |
善五郎の滝
善五郎の滝【ぜんごろうのたき】は、乗鞍高原に位置し、長野県松本市安曇鈴蘭にある滝である。落差21.5m、幅8mの端正で美しい滝である。
鈴蘭橋から少し下った場所に展望台(滝見台)がある。善五郎の滝は、三本滝や番所大滝と共に「乗鞍三滝」と称される。
名 称 | 善五郎の滝【ぜんごろうのたき】 |
所在地 | 長野県松本市安曇鈴蘭 |
Link | 善五郎の滝 – 松本市ホームページ |
番所大滝
番所大滝【ばんどころおおたき】は、乗鞍高原の下部に位置し、長野県松本市安曇番所にある滝である。落差40m、幅15mの大滝で、滝見台まで水しぶきが上がることもある豪快な滝である。
番所大滝は、三本滝や善五郎の滝と共に「乗鞍三滝」と称される。
名 称 | 番所大滝【ばんどころおおたき】 |
所在地 | 長野県松本市安曇番所 |
Link | 番所大滝 | Go NAGANO 長野県公式観光サイト |
北アルプスの温泉郷一覧
温泉地名 | 泉質 | 所在地 |
---|---|---|
蓮華温泉 | 単純酸性泉 重炭酸土類泉 酸性石膏泉 | 新潟県糸魚川市 |
白馬鑓温泉 | 含重炭酸土類硫黄泉 | 長野県白馬村 |
鐘釣温泉 | 単純温泉 | 富山県黒部市 |
祖母谷温泉 | 単純硫黄泉 (硫化水素型) | 富山県黒部市 |
名剣温泉 | 単純硫黄泉 (硫化水素型) | 富山県黒部市 |
阿曽原温泉 | 富山県黒部市 | |
地獄谷温泉 | 富山県立山町 | |
高天原温泉 | 単純硫黄泉 (硫化水素型) | 富山県富山市 |
湯俣温泉 | 長野県大町市 | |
上高地温泉 | 単純硫化水素泉 | 長野県松本市 |
中の湯温泉 | 硫黄泉 | 長野県松本市 |
坂巻温泉 | 炭酸水素塩・硫酸塩・ 塩化物泉 | 長野県松本市 |
乗鞍高原温泉 | 単純硫黄泉 (硫化水素型) | 長野県松本市 |
白骨温泉 | 単純硫化水素泉 含硫黄-カルシウム・ マグネシウム-炭酸水素塩泉 (硫化水素型) | 長野県松本市 |
平湯温泉 | 炭酸水素塩泉 塩化物泉 単純泉 硫黄泉 | 岐阜県高山市 |
蓮華温泉
蓮華温泉【れんげおんせん】(標高1,475m)は、白馬岳や朝日岳などの登山拠点になっている「蓮華温泉ロッジ」が季節営業(例年3月下旬~10月20日)している一軒宿の秘湯である。
近代的な造りの「総湯」(単純酸性泉)と呼ばれる内湯以外に、下記のような4が所の露天風呂があり、日帰り入浴もできる。
- 仙気の湯(単純酸性泉)
- 黄金湯(重炭酸土類泉)
- 薬師湯(酸性石膏泉)
- 三国一の湯(単純酸性泉)
秘湯的雰囲気を楽しみたいならロッジから山道を徒歩5分から15分ほどの場所に散在する外湯の露天風呂に行けばよいが、露天風呂には更衣室はなく、衣服は湯船脇の木や石の上に置くことになる。蓮華温泉ロッジは、登山者のための山小屋であるので、決して一般的な旅館のような待遇を期待してはいけない。
名 称 | 蓮華温泉【れんげおんせん】 |
所在地 | 新潟県糸魚川市 |
Link | 白馬岳蓮華温泉ロッジ | 山の中の一軒宿 |
白馬鑓温泉
白馬鑓温泉【はくばやりおんせん】(標高2,100m)は、白馬鑓ヶ岳の中腹にある温泉で、解体式山小屋の「白馬鑓温泉小屋」だけが季節営業(例年7月上旬~9月下旬)している一軒宿の秘湯である。
泉質は、含重炭酸土類硫黄泉であり、泉温は43.1度で「源泉かけ流し」であるのは嬉しい。日帰り入浴もできるという。
内湯はなく、露天風呂だけがある。露天風呂は眺望が良い混浴露天風呂と、回りを壁で囲まれた女性専用風呂があるという。
白馬鑓温泉小屋は、基本的に登山者のための山小屋であるので個室はなく、相部屋であり、食事も簡素である。決して一般的な温泉旅館の待遇と比べてはいけない。
名 称 | 白馬鑓温泉【はくばやりおんせん】 |
所在地 | 長野県北安曇郡白馬村北城字白馬山国有林 |
Link | 白馬鑓温泉小屋について| 白馬岳だより(株)白馬館 |
鐘釣温泉
鐘釣温泉【かねつりおんせん】は、黒部峡谷の山間部、西鐘釣山の南麓に位置する温泉である。泉質は単純温泉で、源泉温度は60℃とちょうど良い温度である。
鐘釣温泉旅館と鐘釣美山荘の2軒のみが営業している。鐘釣温泉旅館の『鐘釣温泉』と、鐘釣美山荘の『新鐘釣温泉』に分ける場合があるが、本稿では同一の温泉と捉えたい。
2軒の宿とも内湯は無く、露天風呂を利用する。鐘釣温泉旅館の場合は、長い石段を下った河原の露天風呂を利用することになる。一方、鐘釣美山荘の場合は、宿から近い場所に露天風呂があるため、内湯が無い不自由を感じることはない。
名 称 | 鐘釣温泉【かねつりおんせん】 |
所在地 | 富山県黒部市宇奈月町黒部奥山国有林(鐘釣) |
Link | 鐘釣温泉・鐘釣河原 | 観光/旅行サイト「とやま観光ナビ」 美山荘 (miyama-jp.com) |
祖母谷温泉
祖母谷温泉【ばばだにおんせん】(標高770m)は、祖父谷【じじだに】と祖母谷【ばばだに】の合流地点にある温泉で、山小屋の「祖母谷温泉小屋」だけが季節営業(5月~11月末)している一軒宿の秘湯である。折尾ノ大滝(前述)は、山小屋からは比較的近い位置にある。但し、100mほどの高低差をほぼ直登する箇所があることを覚悟する必要である。
泉質は、単純硫黄泉(硫化水素型)で、源泉の温度は98℃であり、2つの源泉を使い分けている。祖母谷温泉に湧出する源泉は内湯に使い、上流の「祖母谷地獄」に湧出する源泉は引湯をして露天風呂に使用している。下流に位置する名剣温泉にはこの祖母谷地獄の源泉を配湯しているという。
祖母谷温泉小屋は、基本的に登山者のための山小屋であるので個室はなく、相部屋であり、決して一般的な温泉旅館の待遇を期待してはいけない。
名 称 | 祖母谷温泉【ばばだにおんせん】 |
所在地 | 富山県黒部市宇奈月町黒部 |
Link | 山小屋 祖母谷温泉 │ 山小屋.info |
名剣温泉
名剣温泉【めいけんおんせん】は、黒部峡谷鉄道の欅平駅から山道を行った先にある温泉で、「名剣温泉旅館」だけが季節営業している一軒宿の秘湯である。
泉質は、単純硫黄泉(硫化水素型)で、源泉の温度は98℃とされる。源泉は、上流に位置する祖母谷地獄(祖母谷温泉)からの引湯である。
名剣温泉旅館は、地上2階、地下2階建ての山小屋風の建物であり、男女別の内湯と露天風呂が完備されている他、家族風呂もある。時間制限があるが、日帰り入浴も可能であるという。
日本秘湯を守る会会員の旅館で、客室は和室10室のみである。冬季は、黒部峡谷鉄道(トロッコ列車)が運休するため、それに伴い休業する。登山とは別に、秘湯の雰囲気を味わうには最高のロケーションの宿と言えるかも知れない。
名 称 | 名剣温泉【めいけんおんせん】 |
所在地 | 富山県黒部市 |
Link | 富山県黒部峡谷の温泉旅館 | 名剣温泉 |
阿曽原温泉
阿曽原温泉【あぞはらおんせん】は、阿曽原谷にある温泉で、解体式山小屋の「阿曽原温泉小屋」だけが季節営業(例年7月~10月)している一軒宿の秘湯である。
風呂は内湯はなく、露天風呂のみである。コンクリート造りの露天風呂が一つだけ小屋から5~10分ほど下っていった先の河畔にある。時間を区切って男女が交代で利用するが、夜には混浴となる。
黒部峡谷の核心部に位置し、「下廊下」【しものろうか】と呼ばれる登山道(水平歩道)おいては、阿曽原温泉小屋が唯一の山小屋である。登山者にとっては重要な山小屋となっている。
黒部峡谷は豪雪地帯であり、阿曽原谷も雪崩の巣窟のため、損壊の危険があることから恒久的な建物の設置はできない。そのため山小屋はプレハブ造りで、毎年秋の営業終了後に解体され、翌年の初夏に再び組み立てられるという。
名 称 | 阿曽原温泉【あぞはらおんせん】 |
所在地 | 富山県黒部市黒部奥山国有林地内 |
Link | 阿曽原温泉小屋 |
地獄谷温泉
地獄谷温泉【じごくだにおんせん】(標高2,300m)は、室堂平にある温泉である。
かつては噴気帯近くに温泉宿があったらしいが、火山性ガスの危険のために閉鎖され、現在は地獄谷の源泉から近隣の4軒の温泉宿(みくりが池温泉、らいちょう温泉(雷鳥荘)および雷鳥沢温泉(雷鳥沢ヒュッテとロッジ立山連峰)へ配湯されている。
これら4軒の宿は「旅館」と「山小屋」の2つの要素を兼ね備えている。純粋な山小屋とは異なり、定員以上の宿泊はできないため、シーズン中は予約が必須となる。
名 称 | 地獄谷温泉【じごくだにおんせん】 |
所在地 | 富山県中新川郡立山町 |
Link | 【公式】みくりが池温泉:日本一高所の天然温泉 らいちょう温泉雷鳥荘 | 雷鳥荘 登山とハイキングの宿「雷鳥沢ヒュッテ」 |
高天原温泉
高天原温泉【たかまがはらおんせん】(標高約2,100m)は、北アルプス・水晶岳の麓にある高天原の北側にある温泉である。アクセスの困難さから「日本一遠い温泉」とも呼ばれる。
山奥の温泉であることから徒歩(登山)でしか行くことができない。どの登山口からも1日では辿り着くことはできず、通常は途中の山小屋で1泊して行くことになる。
泉質は、単純硫黄泉(硫化水素型)であり、源泉をそのまま注いでいる露天風呂が3か所ある。そのうち1つは囲いがあり女性用となっているが、山中の温泉なので簡易な脱衣所しかない。
温泉から1 km弱ほどのところに山小屋の高天原山荘があり、温泉もここが管理している。山荘から温泉までは下り20分程度で、帰りは登りとなり30分ほどかかる。つまり往復50分ほど要するので、汗を流しにいく温泉ではなく、あくまでも山奥の秘湯を楽しむためと割り切って考えた方がよい。
名 称 | 高天原温泉【たかまがはらおんせん】 |
所在地 | 富山県富山市有峰黒部谷割 富山県中新川郡立山町千寿ヶ原(高天原山荘) |
Link | 「高天原温泉(高天原山荘)」日本一遠くにある秘湯 |
湯俣温泉
湯俣温泉【ゆまたおんせん】は、高瀬ダムの上流域の高瀬渓谷にある温泉で、山小屋の「晴嵐荘」【せいらんそう】だけが営業している一軒宿の秘湯である。晴嵐荘には内湯もあるが、機械掘りされた露天風呂も備えられている。晴嵐荘は、北鎌尾根や湯俣川方面への唯一の登山基地としての役割を担っている。
湯俣の地名は、その名の通り、温泉が湧出する場所であり、河原を掘れば手製の露天風呂を作ることができる。噴湯丘の場所には手作りの露天風呂があり、「野湯」を楽しめる。
名 称 | 湯俣温泉【ゆまたおんせん】 |
所在地 | 長野県大町市平湯俣 |
Link | 湯俣温泉 晴嵐荘 |
上高地温泉
上高地温泉【かみこうちおんせん】は、上高地の梓川右岸にある温泉で、焼岳に源泉を有し、泉質は単純硫化水素泉である。
上高地温泉ホテルと上高地ルミエスタホテルの2軒が季節営業(4月後半~11月中旬)をしている。
名 称 | 上高地温泉【かみこうちおんせん】 |
所在地 | 長野県松本市安曇上高地 |
Link | 上高地温泉ホテル – 上高地公式ウェブサイト 【公式】上高地ルミエスタホテル(旧清水屋ホテル) |
中の湯温泉
中の湯温泉【なかのゆおんせん】は、上高地への道中、安房峠付近にある温泉で、泉質は硫黄泉である。一軒宿の「中の湯温泉旅館」は、かつては釜トンネル入り口付近にあったが現在の地に移転されている。
名 称 | 中の湯温泉【なかのゆおんせん】 |
所在地 | 長野県松本市安曇4467 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 中の湯温泉旅館(公式ホームページ) |
坂巻温泉
坂巻温泉【さかまきおんせん】(標高約1,220m)は、上高地に向かう国道158号の山手側にある温泉で、日本秘湯を守る会会員の「坂巻温泉旅館」だけが営業している一軒宿の秘湯である。
泉質は、炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物泉である。
名 称 | 坂巻温泉【さかまきおんせん】 |
所在地 | 長野県松本市安曇上高地 |
駐車場 | あり(無料) |
Link | 信州上高地 坂巻温泉旅館 公式サイト |
乗鞍高原温泉
乗鞍高原温泉【のりくらこうげんおんせん】は、乗鞍岳の山腹から湧出する温泉を乗鞍高原へと引湯している温泉である。泉質は硫化水素型の単純硫黄泉である。乗鞍高原内には引湯施設として57軒ほどが登録されている。
名 称 | 乗鞍高原温泉【のりくらこうげんおんせん】 |
所在地 | 長野県松本市安曇 |
Link | ♨︎ のりくら温泉郷 / 乗鞍高原温泉 |
白骨温泉
白骨温泉【しらほねおんせん】は、北アルプスの乗鞍岳山麓(標高約1400m)にある温泉である。
泉質は、単純硫化水素泉と含硫黄-カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉(硫化水素型)である。胃腸病、神経症、婦人病、慢性疲労などに効能があり、かつて「白骨の湯に三日入ると三年は風邪をひかない」と言われた。
「乳白色の湯」として知られているが、湧出時には無色透明であり、時間の経過によって白濁する。白濁の要因は、温泉水中に含まれている硫化水素から硫黄粒子が析出することと、重炭酸カルシウムが分解して炭酸カルシウムに変化するからである。
白骨温泉には10軒余りの宿と食事処や土産物店などが数軒あるだけで、ひっそりとした佇まいの温泉街である。梓川のせせらぎ以外に音はなく、夜は星が美しい場所である。
付近には「竜神の滝」や「冠水渓」、特別天然記念物「噴湯丘」など観光スポットもある。「白骨温泉の噴湯丘と球状石灰石」は、国の特別天然記念物に指定されている。
名 称 | 白骨温泉【しらほねおんせん】 |
所在地 | 長野県松本市安曇 |
Link | 信州・白骨温泉【公式】 白骨温泉 つり橋の宿 山水観 湯川荘 |
平湯温泉
岐阜県高山市に立地する5つの温泉地は奥飛騨温泉郷と呼ばれ、武田信玄ゆかりの温泉郷である。
平湯温泉【ひらゆおんせん】も奥飛騨温泉郷の一つである。平湯温泉には約40の源泉があり、湧出量も毎分約13トンと豊富である。泉質には、炭酸水素塩泉、塩化物泉、単純泉、硫黄泉の4種類が知られている。
温泉街の中心から少し離れた場所に「神の湯」と呼ばれる、平湯温泉発祥の露天風呂がある。温泉街には共同浴場も4軒ある。
上高地と乗鞍の2観光地のマイカー規制が始まったことで、平湯温泉の駐車場に自動車を駐車し、ここから頻発されるシャトルバスに乗るという観光ルートが誕生した。このようなう交通事情の大変化によって、国内外の観光客が大幅に増加し、平湯温泉はもはや秘湯ではなくなってしまった。観光地として繁栄することはステークホルダー(stakeholder)にとって歓迎すべきことであると思うが、観光客の一人としてはちょっと残念な気持ちになっているのは私だけであろうか。
名 称 | 平湯温泉【ひらゆおんせん】 |
所在地 | 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯 |
Link | 平湯温泉について|平湯温泉旅館協同組合【公式サイト】 |
福地温泉
福地温泉【ふくじおんせん】も奥飛騨温泉郷の一つである。標高が約1,000mの山あいの岐阜県と長野県の県境に位置する温泉地である。温泉街は、山の静寂に包まれ、落ち着いた秘湯的な雰囲気があり、好きな温泉である。泉質は、単純泉と炭酸水素塩泉が知られている。
福地温泉からは新穂高ロープウェイの新穂高駅にも比較的近いので、北アルプスの槍・穂高連峰を楽して眺めることができる。
名 称 | 福地温泉【ふくじおんせん】 |
所在地 | 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地 |
Link | 福地温泉観光協会 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷 福地温泉 奥飛騨温泉郷・福地温泉の旅館 元湯 孫九郎 |
新穂高温泉
新穂高温泉【しんほたかおんせん】も奥飛騨温泉郷の一つである。岐阜県高山市に位置し、新穂高ロープウェイの駅が近くにあるので、北アルプス・穂高連峰の登山基地となっている。
5つの温泉地からなる奥飛騨温泉郷(平湯温泉、福地温泉、新平湯温泉、栃尾温泉、新穂高温泉)のなかでは、新穂高温泉が新穂高ロープウェイの駅に最も近いため、登山ブームによりこの温泉地へは登山者が急増したという。北アルプス登山の拠点としては恵まれた立地であり、下山後に登山の疲れと汗を流して帰路に着くことができるだろう。
名 称 | 新穂高温泉 |
所在地 | 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷新穂高 |
Link | 新穂高温泉観光協会 奥飛騨温泉郷観光協会 | 平湯・福地・新平湯・栃尾・新穂高 |
名 称 | 新穂高ロープウェイ |
所在地 | 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷新穂高 |
Link | 新穂高ロープウェイについて|【公式】新穂高ロープウェイ |
あとがき
北アルプスは山岳だけでなく、その山岳の裾野に広がる高原も魅力的である。夏は避暑地として、冬はスキー場として賑わっている所もある。
また、北アルプス内あるいはその周辺には「秘湯」と呼ぶに相応しい温泉がいくつもある。それだけでも魅力的であり、実際に行くことになれば、到着前からワクワクする。
個人的な話で申し訳ないが、折尾ノ大滝に友人と行ったことは長らく忘れていた。理由は分からない。本稿を書いていて偶然に想い出したが、同時に一般に「水平歩道【すいへいほどう】」と呼ばれる黒部峡谷の登山道を友人と冷や汗をかきながら歩いたことも想い出した。
水平歩道とは、黒部峡谷の核心部「下ノ廊下」を通る登山道であり、欅平(富山県黒部市)から仙人谷までの黒部川上流沿いに造られた約13kmの歩道(登山道)を指す。登山道は黒部川の左岸に沿って、ほぼ同じ標高(約1,000m)を保ったまま水平に延びているため「水平歩道」と呼ばれる。関西電力の保守点検作業者が通るルートなので一応、整備はされている。しかし、実際は鋭く切り立った黒部峡谷の断崖を「コ」の字形にくり抜いて作られた道幅が1m未満の道であり、人ひとりが通れる広さしかない。
高い所が苦手な私がよくも通れたものだと思う。今の私には絶対に歩くのは無理である。もし谷底をみたりしたら目が回ることだろう。若かりし日とはいえ、高い所は苦手であったはずである。あまりの恐怖体験のため記憶から消されていたのであろうか。